異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第144節

 医務室では未だに少なくない怪我人が治療を受けている。こうやって見てみると、魔法による治癒はゲームのように即効性のあるものではないみたいだ。まぁアイリスの治療を受けた俺自身、そういう予感はあったけど。


「カンザキ選手ですね。こちらにどうぞ」


 若い女性、色白でやや背が高いところを鑑みるに、トール人か?
 薄い緑髪が目を惹く。


「今から治癒を施しますので、負傷部を見せてください」


 お姉さんにそう言われ、俺は上半身裸になる。どうせ医者相手だと思い、ズボンも脱ぐ。それにしても、フィルの奴、容赦なく俺の手足を狙ってたんだな。しかも、的確に腱を狙っていたようだ。


「では、身体の力を抜いて体内の魔力を循環させるイメージを保ってください」


 いや、魔力なんてないんですけど。
 お姉さんは俺の傷口近くに手をやり、何かの力が働いているのか傷口がじんわりと暖かくなる。
 温熱治療かな?
 血行を促進し、細胞の分裂を活性化させて通常より早く治癒が進む方法だ。しかし、あまりにもゆっくりだ。


「……おかしいですね」


「何か?」


「通常なら瞬時に止血ができるはずなんですが、むしろ出血量が少し増えたような……」


「止血してないのに患部を温めたら、そりゃそうなりますよ」


「しかし……」


「ああ、そういやさっきの戦いで魔力の流れを乱す毒ってので切られたんで、そのせいかもしれません」


「もしかして、乱魔草の毒じゃ……」


「乱魔草?」


「ええ。乱魔草というのは周囲の魔力を取り込み、成長に必要な因子だけを取り込み、残りを外部に排出する草なんですが、その乱魔草を煎じた毒は周囲の魔力の流れを乱す効果があるんです。それが体内に入ると、私達トール人なら歩くこともままならないでしょう」


 結構やばい毒ぽいな。


「こうなると乱魔草の毒が抜けるのを待つしか……」


「どれぐらいで解毒できるんだ?」


「幸い、カンザキさんはそこまで大きな影響は出てないようですが……投与された乱魔草の量にもよりますが、短くても半日は抜けないかと」


 ってことはそれまで治療はお預けか。三回戦に響くだろうなぁ。


「解毒薬とか無いのか?」


 俺の質問に女医さんは俺の体をまさぐった。


「……解毒薬を投与するには遅すぎましたね。毒が全身に回っているようなので、今から解毒薬を投与しても解毒までの時間はあまり変わらないと思います」


「分かった。後は自分で治すよ」


 念のためと救急箱の中身は常に補充している。この程度なら包帯でも巻いておけばいいだろう。

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