異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第143節

「え」


「ギブアップだよ。兄さん、一体どんな体してんだ」


 フィルは短刀を鞘に収め、両手を挙げて降参の意を示した。
 実況は俺の勝利を告げるが、俺はそれを聞き流した。


「まぁ気づかれないトリックのネタばらし程、興冷めな物もないけど……俺の武器には毒が仕込んであったんだよ」


「……毒?」


 まぁルール上、毒を規制する文言はない。相手を殺すと減点はあるけれど。


「ああ。体内に循環する魔力を少し乱して、魔宝石の発動を抑えたり、魔法そのものを撃てなくしたり、よく利く奴は立てなくなる毒をな。……まぁ兄さんには効かなかったから、俺はもうお手上げってわけさ」


 毒か……。まぁ仕込んでくる奴は仕込んでくるだろうな……普通。


「一応、魔獣や魔人にも利くって優れもんなんだけど、兄さんに効かないようじゃイマイチだな」


「いや、まぁ俺は特別だからな」


 謙遜にしては随分と傲慢な言い方だが、そう口についた。実際、魔力がないってのは有り得ない事らしいし。


「特別か……まぁ特別だな。なにせ兄さんはレオ=ルーカスのお気に入りだからな」


 その言葉に対し、俺は特に返す言葉が無かった。


「それでどうだい? 俺は兄さんの役に立てそうかい?」


「ああ。十分だ」


「なら――」


「今夜、俺の屋敷に来てくれ。この後は用事があるんでな」


「分かった」


 フィルはあっさりと舞台を降りた。


「おめでとうございます。カンザキ選手」


 実況が俺の傍に近づいてきた。


「ああ、どうも」


「実に見事な戦いでした。さすがのフィル選手もカンザキ選手のあの破壊力の前にはお手上げだったようですね」


「まぁ結局、一発も当てられなかったんですけどね」


 そう考えると、俺だけが負傷し、フィルは無傷。なのに俺が勝つというチグハグな結果に終わった。元々、フィルの方は優勝は狙ってなかったのかもしれない。


「しかし、相手選手の戦意を削ぐのも一つの勝ち方です。さて、カンザキ選手は『黒髪の異人』という名で呼ばれ、今大会の注目を集めていますが、そのことについてどう思っていますか?」


「まぁ俺はこの国では珍しい黒髪ですし、異人というのも間違ってません」


「なるほど。カンザキ選手はどこに生れですか?」


「まだこの国と交流のない日本という国から来ました。なので、俺はアベル人のような容姿をしていますが日本人です」


「ということは、ニホン人は皆カンザキ選手のように黒髪でシーク人にも劣らない力を持っているのですか?」


「そうですね。俺より力が強いニホン人ならたくさんいますが、この国に来れるのは俺だけですね」


「それはまたどうして?」


「単純に遠いからですよ……っと」


 すこし眩暈がしてきた。そこまで深い手傷は負っていないつもりだが、それでも血は少なからず流れた。


「それでは、カンザキ選手に勝利の拍手をお願いします!」


 観客席から送られる拍手を浴びながら、俺は医務室へと向かった。





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