異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第140節

 俺は足を止め、魔力の供給を再開する。
 一度に圧し掛かる重圧。少しだけ眩暈を覚え、武器を持つ手に力が入る。


「カンザキ選手が足を止めた! これは迎撃するつもりなのか!?」


 フィルは視線を左右に振って罠が無いことを確認してから俺にめがけて攻撃を仕掛けてくる。


「障壁!」


 フィルの最初の一撃だけ止める。しかし、すぐに二撃目がくるだろう。その隙間の時間に俺はメイスを振り下ろした。
 鈍い音。散らばる破片。手にジンとしびれる感覚。


「カズキ選手の反撃をフィル選手は後退し避けた! さすがカズキ選手の一撃! 舞台が石畳が粉々に割れている! この攻撃を受ければまず間違いなく復帰は不可能! フィル選手の短刀では受け流すことも難しいでしょう!」


「兄さん、そんな攻撃を人間に向けちゃダメだぜ。俺の腕なんか簡単に千切れちまう」


 フィルは苦笑しながら俺と対峙する。俺の攻撃後の隙を見ての反撃はしてこない。


「それにしても、さっきの手品は何だ? 魔法か?」


「さぁてね。手品師がトリックの種を自ら明かすわけがないだろう?」


 俺は含んだ笑いを見せて挑発した。


「兄さん、本当は戦士じゃないんだろう? 戦い方を見れば分かる」


「だったらなんだと思うんだ?」


「魔法使いなんだろう?」


「生憎、魔力は持ってないのさ」


「それでも魔石と魔宝石がある。並の人間じゃできない発想だが、兄さんみたいな非常識、悪い意味じゃないぜ? 俺らとは頭の作りが違うと何があってもおかしくねぇ」


「それは買い被りだ」


「俺は目利きも多少利く。だから、ここ最近出回ってる外来品だって俺らの常識から外れてることだって分かるさ」


 なるほどね。鑑定はリコだけの専売特許じゃない。それなりの目利き、ゲームで言うところの盗賊なんかには品物の価値を測るぐらいはできるかもしれない。それがこの男に当てはまるかどうかは別の問題だが。
 フィル口数が増えたのはこちらを牽制しての事。喋りながら別の事を考えてるのは分かる。俺だって似た手は使う。
 だから時たま、一撃を加えながら話に付き合う。そうして舞台は荒々しく粉々になっていく。


「兄さん、それ以上やったら運営から怒られるぜ?」


「心配するな。一応、この大会のルールは読んでる。舞台の破壊は何のルールにも抵触しない」


 誰だって文字があれば読んでしまう習性がある。特にルールなんかは読んだ上で、ルールの隙間がないかを確認する。そこらへんの小手先の技だって欠かさない。


「さぁて、第二ステージだ」


 真っ平らな舞台は様変わりし、凸凹で瓦礫が転がる不安定な足場の出来上がりだ。


「どっちが先にギブアップするかな!」

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コメント

  • きみどりさん

    いつの間に文字が読めるように?

    0
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