異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第138節

 一回戦と同じく、控室で対戦相手と相対する。
 今度の相手は俺と同じくらいの背丈だが、引き締まった体をしている。もちろん、腹筋とか剥き出しにしているわけではないが、首回りの筋肉が発達しているぐらいは見て取れる。
 得物は短刀。漫画などでは防御向きの武器としても描かれるが、俺の攻撃を防ぐには脆すぎるだろう。
 トーナメント表で見る限りでは相手はシード選手では無かった。過去に高い戦績を上げたことが無いか、初出場なのだろうか。


「よぉ。お前が『黒髪の異人』か」


「ああ。そうだけど?」


 相手はこっちを知っている口ぶりだ。


「よく噂を耳にするんだよ。ロト陛下、いやまだロト殿下か。ロト殿下の部下がわざわざ黒髪のアベル人を王城に招いてるってな。しかもそのアベル人はこの国の住民じゃないときた。それにその服装、俺達が着る服とは全く違う。それに商売でも一儲けしてるんだろう? お前ぐらいの黒髪、そうそういやしない。そんな人間がオルコット商会に出入りしている姿も多く見られてるって聞くぜ?」


「何が言いたい?」


 饒舌なキャラ。自分の情報網を甘く見るなといいたいのか。まぁそこらへんはクリスやレオのせいで慣れてはいるけれど。


「いやなに。俺だけアンタのことを知っていて、アンタが俺のことを知らないってのも不公平だろ? だから自己紹介だ。俺はフィル。ただの傭兵さ」


 ただの傭兵と自己紹介してきて、ただの傭兵だった試しがあっただろうか。


「その傭兵が何の用なんだ?」


「お前が金を持ってるってのは知ってる。金を持ってる奴は俺を雇う可能性がある。だから顔を覚えてもらう。当然の話だろう?」


 とても雇われる側の口調ではない。


「生憎、俺には腕利きの人間が何人もいる。今更誰かを雇おうなんて思わないさ」


「それでも、あんたは嬢ちゃん達に汚い仕事をさせられないだろう? その点、俺なら汚い仕事だって請け負うぜ。あんたが金さえ積んでくれるなら、この試合だって負けてもいい」


「八百長か?」


「例えさ。あんたはどこか汚い事が嫌いな節があるみたいだからな。でも、綺麗事だけじゃこの世の中渡っていけない。そうだろ? そういう時に俺みたいな人間がいれば便利ってもんさ」


「……」


 要するにこいつは俺に自分を売り込んでるのか。それも自ら汚い仕事をすると言ってる。


「金さえ払ってくれれば、汚いだけじゃなく危険な仕事だって請け負うぜ?」


「……分かった」


「何が分かったって?」


「まずはお前の実力を見せてもらうぜ。フィル」


「実力主義ってわけかい。話が早いじゃないか」


「俺に勝つか負けるかは問題じゃない。ロトと同じさ。戦いの中で使えると俺に思わせたら雇うことを考えてもいい」


「オーケー」

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