異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第137節

「先程の男性、とても強いですね」


「フランもそう思うか」


 俺はロンの背中を見送った後、トーナメント表を確認してからアイリスとフランとで部屋の角を陣取った。先程のやり取りのせいか、俺たちの周囲に近づく者はいない。ジムとは少し視線があったが、会釈する程度にとどめた。


「三回戦であの男と当たるのか……」


「かなり手強い相手ですね。あのロンという男は優勝候補クラスです。今大会は『白き雷』が出場していない以上、混戦は必至。主、気を付けてください」


 とはいってもなあ。準備はしてるつもりだが、あの男は手数が多そうだ。障壁だって簡単に破られそうだし。


「アイリス、何かいい手は思いつかないか?」


「……カズキ様は近接戦闘の腕は高いレベルではないのですよね?」


「ああ。腕力なら人並み以上だけど、技術の方は全然でダメだ」


「なら、魔法で戦うのはいかがでしょうか?」


「魔法? でも、俺は魔力は持ってないし魔力の制御だってできないんだぜ?」


「でも、今は魔力を調整できる吸魔石があります」


 あ、そういえばそうだ。


「自由に魔法は使えませんが、私のように強い風を吹かせる程度の魔宝石ならたぶん簡単に手に入ります」


 確かにアイリスの言う通りだ。俺は今まで魔力がないから魔法が使えないと思い込んでいた。しかし今なら使える。


「今からでは二回戦には間に合いませんが、三回戦までには間に合うでしょう」


「……そうだな。そうしよう」


 あのロンという男に勝つには単なる力任せの戦い方じゃ勝てない。かと言って、今からあの技量に拮抗できる技術も手に入れることはできない。なら、外部の力を借りるしかないだろう。それが金による力でもだ。


「カズキ様に魔法の力が加われば勝てる人はいないでしょう」


「それは買いかぶりすぎだけどな」


 俺はアイリスの期待には苦笑で返すしかない。アイリスは俺を立ててくれるが、俺自身の能力は自分で分かる。
 周りから俺への評価は高い。フランなんかは俺の実力が力があるだけの素人だと見抜いてるし、フランが見抜いてるなら当然ながらレオも見抜いているだろう。レオはその上で何か期待をしているような視線をよこしてくる。


「ハァ……」


 思わずため息が出る。褒められるのは嬉しいし、期待を向けられるのも悪い気はしないが、それも過ぎればただの重みだ。
 それでも女の子二人に見られてるんだ。恥さらしな真似だけはしないようにしよう。


「ところで、フランの方は試合はどっちの武器で行くんだ?」


「今回は対人ですから、片手剣と盾で挑むつもりです」


「まぁ妥当だろうな」


 両断の大剣がいい例……とも言い切れないか。あれはある意味、相性の問題だった。あれだけ重い武器と巨体ならアイリスだって簡単には飛ばせなかっただろうし、フランと当たれば実力の差でフランが勝ちそうだ。


 そうやって話しているうちに俺の二回戦の時間となった。

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