異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第135節

 俺達が話し終わった頃、初戦の全試合が終わったようだ。多くはないが、会場から出る人間がいる。試合と試合の間は食事を摂ったり、簡単な買い物をするぐらいの時間はある。
 ただし、参加者は別だ。勝ち残った者は再び説明会場に戻らなければならない。といっても、行かなかったからといってペナルティはない。
 次の対戦相手を確認したり、敵情視察を行ったり、自分を売り込んだりとやろうと思えば、そこでしかできないことはある。


「俺らも戻るか」


 俺は二人を連れ、説明会場に戻った。すると、あれだけいた参加者が三分の二ぐらいに減っていた。半分じゃないのはそれだけシード選手が多いからだろう。
 そういえば、最初はなかった椅子も用意されている。皆は腰かけており、俺達もそれにならって椅子に座る。


「初戦を突破した諸君、既に実力を認められた諸君、お疲れ様」


 運営のおっさんが壇上で演説をするが、俺達を含め全員が聞き流している。


「今年は例年に劣らず多くの実力者が競い合う姿に観客も沸いている。特に今年は話題性のある選手が多い。これにはロト殿下もお喜びになられている。皆、負けぬ実力、勝つ実力を存分に示してほしい」


 負けない実力と勝つ実力か。
 運営の人間の話は終わり、選手は各自自由行動となる。運営側から武器や防具の手入れのための砥石や油なんかの支給もあるため、念を入れる人間は念を入れている。そういえば、漫画なんかではこういった隙間時間の行動も採点の対象だったりする事があったっけか。
 そんな妄想をしつつ、席を立つ。


「よぉ兄ちゃん。可愛い子連れて参加とは良いご身分じゃのぉ」


 肩に手を置かれ振り向くと、大柄なアベル人の男が俺の肩を掴んでいた。


「いえいえ、それほどでも」


 挑発には挑発で返す。俺の悪い癖かもしれない。


「カズキ様!」
「主!」


「いや、これぐらいいいよ」


 このアベル人の男、体は大きいがあの『両断の大剣』程の凄味はない。大きくて力があるが、それはアベル人の範囲内だ。あの『両断の大剣』たる大柄なシーク人程の力は無さそうに感じる。


「これぐらい?」


 顔を近づけてくる大男。眼前で開かれる口がすこぶる臭い。


「口腔ケアはきちんとした方がいいですよ? そんな口臭じゃ、女どころか汗臭い男だって近づかないと思います」


「ッ! この!」


 大男は怒り、俺の左頬を殴ろうとし、俺は即座に障壁を展開しようとした。


「落ち着け」


 何者かが俺と大男の間に割り入った。
 

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