異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第134節

「……やはり、そうでしたか」


 あれ、意外と驚かない。


「驚かないのか?」


「こうして主の口から言われたことには驚きましたが、薄々アタイ達とは住む世界が違うとは思っていました」


 住む世界が違うか。


「俺の種族は日本人。この世界では少ない黒目黒髪の種族だ」


「黒髪黒目……カズキ様の種族、日本人は皆、黒目黒髪なのですか?」


 そういや、俺の話ってアイリス達にあまりしてこなかったな。


「ああ。中には髪を染める奴もいるけど、日本人は基本、黒目黒髪だ。俺の黒髪は日本人の平均よりも更に黒いらしいけど」


「そういえば、カズキ様が『黒髪の異人』と呼ばれているのを聞いたことがあります」


「まぁこの世界で黒髪はあまり見かけなかったからな」


 黒髪と言えば、あのロトの弟のモリスも黒髪だったな。


「そういえば、黒髪で思い出したけど、ロトの弟のモリスってどんな奴なんだ」


「モリス様ですか?」


「アタイは詳しくないね。一時は城に居たといってもほとんど誰とも会わなかったし」


「そうか」


「カズキ様、モリス様の事ならジェイドちゃんやアンバーちゃんに訊いてみた方がいいかもしれませんよ?」


「んー、まぁそこまでする必要もないだろう」


 単なる雑談の話題の一つ、いちいち探る必要もない。
 雑談ついでだ。魔大陸についてきちんと二人に話しておく必要があるだろう。
 次の試合までまだ少し時間がある。


「良い機会だ。二人に話しておくことがある」


「なんでしょうか?」


「ああ、俺とロトの件でな。近々、俺はロトと協力して魔大陸に行くことになるだろう」


「魔大陸……あの海向こうの地ですか」


 これにはフランが反応した。


「ああ。ロトの話ではタイン人の操船術で海を渡り、兵を大陸へ輸送する計画らしい。それと同時に俺は魔大陸への物資供給を担うことになる」


「物資の供給ですか?」


「ああ。兵と物資、両方を輸送するとなると多大なコストがかかる。そこで俺が物資の供給については一役担うことになった。フランにとっては耳の痛い話だが、俺とロトと協力し合う口約束の取引の対価として俺はこの吸魔石とお前をもらった」


「……そうだったのですか」


「ああ。今朝、ロトが壇上で演説した魔族の殲滅ってのは国内だけじゃない。お前らが言う、海向こうについての言及だ」


「主も魔大陸に行くつもりなのですか?」


「ああ。そのつもりだ」


「それは危険です! いくら主の力が強いと言っても、絶対ではないです!」


「フランは反対か。アイリスはどうだ?」


「私は……カズキ様のなさりたい事をなせばよいと思います」


 消極的肯定か。


「俺は魔大陸に行く。これは決定事項だ。その上で二人に訊くが、俺と一緒に魔大陸に来るつもりはあるか?」


 二人とも奴隷だ。俺が命じればついてくるしかない。それでもあえて聞く必要があると思ったからだ。


「……もとよりアタイは主のため、戦うために今こうしてここにいる。アタイは着いていく」


 フランは自らの存在価値、存在理由を確かめるようにして答えた。


「アイリスはどうだ?」


「カズキ様がいる所が私の居場所です」


 アイリスは淀みなく答えた。アイリスは考えなしではないし、賢い。その上でそう答えた。その気持ちがうれしい。


「分かった。二人とも連れて行く」

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