異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第133節

「カズキ様!」


 アイリスが駆け寄ってきた。外傷が無いことを目視で確認して少し安心した。


「少し長かったみたいだな」


「相手の方が慎重だったので、少し長引いてしまいました」


 そういえば、アイリスの容姿はハーフで魔人と疑われる要素を持っているんだったか。悪い意味で警戒されたのかな。


「勝てたのか?」


「はい」


「どうやって勝ったんだ?」


 アイリスの戦闘姿がハッキリ言って見えない。


「風の魔法で相手を飛ばして、そのまま舞台に上がらせないようにしました。そうしたら、審判の方が占領勝ちと言ってました」


 そういえば、相手を場外に出して三秒以上経過すれば勝ちにもなるんだったか。


「風の魔法ってそんなに強いのか?」


 台風とかで人がまともに歩けなかったり、ハリケーンとかだと車が飛ぶレベルだということは分かる。しかし、そのレベルの突風を魔法で簡単に出せる物なのか?


「私の魔法はまだまだです。風の魔法ならお父様の方が格段に上ですから」


 人間を足止めできるレベルの突風か。しかも、ハリソンはさらにその上を行くという。本当に局地的なハリケーンぐらい起こせるんじゃないだろうか。


「魔法を使ったんなら魔石も少しは消費したんじゃないか?」


 そういえば、魔法を使うと当たり前だが魔力を消費する。魔力の回復は一日二日で全回復するものではない。武闘大会では三日間に渡り連戦を行う。俺とアイリスで言えば、決勝まで残ると七回戦もあるのだ。魔法使いは魔力という貴重なリソースを温存し、魔石という代替品を使うことをある意味強いられる。


「そうですね……。魔石を一つ、使い尽くしてしまいました」


「なら、これをやろう」


 俺は常に吸魔石に魔力を吸わせるための魔石を携帯している。俺はアイリスから使用済みの魔石を受け取り、未使用の魔石を二つ手渡した。


「あの、カズキ様。一つ多いのですが」


「戦うことが分かっていて、余裕もあるのにギリギリの量を渡す程ケチじゃないつもりだ」


「ありがとうございます!」


「ああ、魔石の事は気にするな」


 実際、魔力が空になった魔石は加工して装飾品にしてから現代で売れるしな。しかも、未使用の魔石の在庫がアホ程ある。昔から変な所で収集癖があるせいか、蓄えるだけ蓄えてしまう。これも貧乏性かもしれない。エリクサー症候群だな。


「二人とも、お疲れ様」


 俺とアイリスが話している所にフランがやってきた。


「ああ。お粗末な戦いだったけど、なんとか勝てたよ」


「いや、初戦があの『両断の大剣』で、あの戦いなら十分だと思う。それに主が戦いの素人ってことも分かった」


 あの立ち回りだ。分かる人間には分かるだろう。素人が拳銃という力を持っても、正しく命中させられるかは別の問題みたいなもんだ。


「まぁね。隠すつもりもなかったから言うけど、俺は力が強いだけの一般人。実の所、戦士でも商人でもない。強いて言えば、俺の職業は学生だから」


「……しかし、戦う技術はなくとも主は勝利した。それも『両断の大剣』という名の知れた冒険者相手に。主も運だけで勝てる相手とは思ってはいないでしょう」


「そりゃあね。まぁネタバラシすると、俺はちょっとしたチートを持ってるから」


 いや、通常の人間より三倍の力が出せる程度の能力をチートというのもおこがましいか。


「チート……ズルということですか?」


「みたいなもんかな……まぁフランには話していいか」


「カズキ様!?」


「いや、その件じゃない」


 俺の本当の能力、IGについて教える気は毛頭ない。この件は従者たるアイリスだけ知っていればいい。


「フラン。俺はアベル人じゃない」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く