異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第132節

「勝者! カンザキ選手!」


 意外な幕引き。傍から見れば、小男が大男を組み伏せるという異様な光景。この光景を理解できる物がどれだけの数いるだろうか。
 俺に地に伏せられたダッドは俺にのしかかられ、すぐに棄権を宣言した。結果として、俺は初戦を突破できた。
 ダッドは実況でもあった通り、魔獣退治を主としているらしい。確かにあの大剣は対人には不向きだ。なにより、破壊力が過剰すぎる。俺が言うのもおかしな話だが。
 俺は倒れたダッドの手を取り、立ち上がらせる。やっぱり、見た目ほど重くはない。


「……素人に負けたか」


 ダッドはそう呟いた。
 俺の実力は推し量られていたらしい。事実、素人だ。武器の扱いも素人丸出し。分かる人間には分かるだろう。


「……俺がアベル人に力で負けるとは思わなかった」


「俺の力は魔宝石によるものですから」


「それは俺も同じだ」


 あの大剣を操るために力の魔宝石を使っていたのか。そういえば、俺の本来の力は魔宝石を付けたアベル人並と言われたことがあったか。その俺が更に力の魔宝石を付けているんだ。確かに力では俺が勝っているのだろう。


「面白い体験をさせてもらった」


 そういってダッドは舞台から降りた。俺もダッドに続き、舞台から降りる。
 午前の試合はこれで終わり。少し時間を空けてから二回戦が始まる。微妙な時間で祭りを楽しむ時間はない。
 俺は適当な場所に腰掛け、武器の手入れをする。とはいうものの、頑丈さを重視したメイス。大剣が欠けるほどの衝撃にもかかわらず、あまりこちらにはダメージがない。
 メイスを手入れする必要がないとなるとすぐに手持無沙汰になった。


「カンザキさんッスよね?」


 目の前に影。俺の事を知っているようだ。


「そうだけど……あ」


 ジムだ。万屋猫目石の店主、リコの客だった男。冒険者として活動し、今大会にも出場していたはずだ。


「久しぶりッス。ジムッス」


「ああ、久しぶり。元気にしてた?」


「はい。あれからカンザキさんに負けないよう鍛えてたんすよ。それで、大会にも出場することになったッス」


 どっかの羽の生えたペンギンもどきのような喋り方をするジム。


「さっきの戦い凄かったッスね。ダッドさんって言えば『両断の大剣』と呼ばれた男ッスよ。それを倒すカンザキさんは今回の大会でも注目株間違いなしッスよ」


「二つ名持ちなのか。でも、シード選手じゃないみたいだけど」


「ダッドさんは魔獣殺しが専門ッスからね。対人も苦手ってわけじゃないはずッスけど。俺みたいな並の冒険者なら相手にもしてもらえないッス」


「そういや、ジムも大会に出場してたんだろ? もう一回戦は終わったのか?」


「俺っちの一回戦はもう少し後ッス」


「そっか。頑張れよ」


「おっす。それじゃ、俺っちは行くッス。カンザキさんもこのまま勝ち進んで欲しいッス」


 そう言ってジムは走り去った。どうやら仲間を待たせていたようで、輪の中に入り人ごみに消えていった。

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