異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第130節

「さすがレオ副隊長から推薦を受けたカンザキ選手! ダッド選手の凶悪な突きを叩き上げた! ダッド選手の大剣の刃が砕けるほどの衝撃、初戦から互いに全力のぶつかり合いだ!」


 いや、こっちは弾いただけのつもりだったんだけど。というかシク男の名前はダッドって言うのか。
 ダッドは大剣を再び中段に構える。傷ついた刃を上、無事な刃が下になるように持ち替えている。
 こっちは見かけ上は万全だが、心臓が口から出そうなほど脈が強い。心臓の鼓動が喉奥にまで伝わり、気持ちが悪くなってきた。


「さすがに先ほどのぶつかり合い! ダッド選手も困惑しているようだ! 身体的にダッド選手が有利かつ武器のリーチもダッド選手が勝っている。しかしその実、カンザキ選手の力が恐ろしく高かった! ダッド選手、さすがに安易に踏み込めなくなったぞ!」


 ダッドはじりじりと間合いを詰めようとしてくるが、先ほどの様な強い踏み込みはしてこない。
 対して俺は緊張から仕掛けられずにいる。
 ダッドは牽制するように剣先を揺らしてくる。しかし、その刀身はかなり傷んでいる。そういえば、曲がりなりにも俺はレオの武器を破壊する事で勝てたんだったか。
 今に来て思ったが、俺が持ってるこの武器。人を殴れば簡単に死ぬだろう。刃の暑い大剣をあれだけ損傷させる破壊力、人間の腕や脚に命中すれば、折れるどころか弾け飛ぶ可能性すらある。
 俺は武器破壊を狙うことにした。
 先ほどの条件反射的な振りではなく、相手の大剣を折る意識の元、メイスのグリップを握り直す。
 ほとんど動かなかった足を一歩前に踏み出させる。


「先に仕掛けるのはカンザキ選手! ダッド選手、それを受ける態勢だ! ダッド選手は大型魔獣を相手にする冒険者! その獲物も対魔獣仕様、これが対人戦においてどのような影響を与えるかと思われたが、あのカンザキ選手の一撃を耐えられたのはこの大剣だからこそと言ってもいいでしょう! しかし、後がないぞ!」


 俺はメイスで大剣を折るための一撃をその大剣に叩き込もうとした。しかし、メイスは大剣に触れること無く空振った。
 まずい。
 俺の狙いが読まれていたのか。
 相手は戦闘のプロ、俺の考えなんて簡単に読まれたのかもしれない。
 メイスを振り上げて空振った今の俺は隙だらけ。そこにダッドが突っ込んでくる。
 俺を吹き飛ばす目的のタックルだ。
 俺は不安定な体勢ながら、左足に力を入れ踏ん張った。
 さすがの巨体、その衝撃は尋常ではなく俺は僅かにひるんだ。しかしそれは相手も同じだった。むしろ、ダッドの方が何かに驚いている。

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