異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第129節

 俺は震えて力の入らない脚を力なく持ち上げて舞台に上がった。
 所詮は初戦。熱烈なコールがあるわけでもなく、俺の内心とは裏腹に少しゆったりとした空気で試合は進行していた。相手の男の事は知らないが、失礼ながら無名戦士同士の戦いだ。盛り上がりに欠けても仕方がないだろう。


「さぁ、次の出場者はなんと、クリスティーナ王女の親衛隊の一人!カンザキ・カズキ選手だ! しかし、親衛隊に入るまでのその経歴は一切不明! レオ副隊長の勧誘を受け、クリスティーナ王女親衛隊に所属! 今回はレオ副隊長による推薦の上での出場だ! 当時無名の兵士だったレオ=ルーカスは過去の大会において優勝経験のある実力者! その彼が推薦をした彼はダークホース! この試合は一見の価値ありだ!」


 前口上が長い。ただし、レオの名前は国民にも認知されているようで、盛り上がりに欠けた戦いの空気が徐々に盛り上がってきた。
 口上がまだ続きそうだと思った俺は武器を杖のように地面に付きたてた。
 ピシッ。
 一瞬、場の空気が静まり返った。なにせ、武器を舞台の上、石畳に置いただけだ。それだけで石畳は四つの欠片に割れたのだから。
 いやぁ。この石畳は脆いな。
 俺はそんな表情を浮かべながら、実況兼司会者の男と目を合わせる。


「長い前口上はこれぐらいにして、試合に入らせてもらいます」


 実況者は俺が怒ったと思ったのか、口上を中断して試合の開始を告げる。


「試合開始!」


 大剣を持ったシーク人の男、名前は聞き忘れた。シーク人の男だからシク男とでも呼ぼう。
 シク男は大剣を中段に構える。それだけで迫力がある。リーチはあちらの方が上。こちらは相手の懐に入らなければ直接は叩けない。
 互いに様子見、といった硬直もなくシク男がまっさきに突っ込んできた!
 俺は咄嗟にその大剣から繰り出される突きをメイスで弾いた。あんなものを受ければ胸骨から背骨まで簡単に貫かれてしまう。
 重なり合う金属音が耳に痛いほど響いてくる。


「チッ」


 シク男が舌打ちをする。
 よく見てみれば、シク男の大剣の刃が一部欠けている。その刀身が反射する光から察するに、刀身そのものにまでヒビが入っているみたいだ。

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