異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第128節

 初戦。アイリスとも別れ、俺は待機室に通された。先客がいたようで、その先客が俺の初戦の相手のようだ。俺は待機室で用意された椅子に座り、先客たる大男と向かい合う形になった。
 男は褐色肌であることからシーク人。携帯している武器は大剣。つまりは俺と同じ力自慢のパワーファイターということになるだろう。その他に特徴らしい特徴はない。大剣に革製の防具。胸当てと脛当てだけが金属製だ。短剣のようなサブウェポンは持っていないようで、大剣一本で挑んで来るらしい。大剣は両刃で刃厚がかなり厚い。振り下ろすか振り払うか、この大男ならある程度は自由に扱えそうだ。体重にして少なくとも百キロはあるだろう。上腕二等筋なんか俺の太ももぐらいある。
 相手も俺の武器を見て何かを推測しているのかもしれない。
 俺の武器は両手で扱うメイスだ。俺の細い体には似つかわしくないとでも思っているのだろう。実際、似合っていない。加重のベルトで俺の見かけの体重を増やすことでなんとか武器に身体が引っ張られないようにしているのだから。まぁ武器の方にも加重の魔宝石を装着しているのは初見では見抜けないだろう。
 俺はこの魔宝石を加重のベルトと呼んでいるが、実際の力は重力が強くなるというよりも、見かけの質力が重くなっている。カラクリは分からないが、そもそも質量という概念が良く分からないんだから仕方ない。


「…………」


「…………」


 大男は貧乏ゆすりをしながら、俺はそんな大男を観察しながら自分達の出番が来るのを待った。


「次の方、どうぞ」


 呼ばれ、俺と大男は立ち上がる。立ち上がった大男は俺よりかなり背が高い。190はあるだろうか。大男は俺を見下し鼻を鳴らしてから先に舞台に登った。
 舞台に登ると最初に実況の人間が出場者の紹介をする。観客の熱を盛り上げるための演出だ。そこらへんは現代と変わらない点は面白いのだが、今は面白いと感じる余裕はあまりない。
 俺は自分の膝がガタガタと揺れるのを感じる。ビビっているのか武者震いなのか分からない。まぁ自分に言い訳してもしょうがないが、たぶんビビっている。その上、あがり症だ。緊張している。精神的には焦っていないつもりなのだが、身体の方は正直だ。心臓はドクドク脈を打ってるし、足は震えている。まばたきの回数も増えているし、呼吸だって少し荒い。背筋には寒いものが走るし、鳥肌だって立っている。
 やっぱり逃げちゃおうかな。
 今更怖気付きそうになる。ただ、観客の中にフランがいると思い出すと格好つけないとと思ってもしまう。
 何十秒ぐらいそうしていただろうか。大男の紹介が終わり、俺の番がやってくる。俺は最後に自分の装備をささっと確認し、舞台に登った。

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