異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第125節

 ロトの演説による興奮が冷めぬままロトは壇上から降り、式典の開会式の閉幕を大臣っぽい人が告げ、人々は思い思いの方向に足を向ける。しかし、皆の表情はまだ興奮が抜けきっていないことがありありと分かる。


「ほら、離せ」


 俺はアイリスとフランを引き剥がす。それにしても、こいつらまで影響を受けるってどういう事なんだ?


「二人共どうしたんだ? というか、二人だけじゃなくてそこのバカ夫婦二人にバカ姉妹」


 俺は他四名に声をかけ、平静を取り戻させる。


「どしたんだよ。お前ら」


 普段の様子と明らかに違う。よくテレビで見るような子供を殺された親がインタビューを受けているようなあの感情が溢れ出るような様子に見えた。まるで大切な人間を失った人間の感情の発露とでも言うのだろうか。そういった悲しみや怒り、そういったものが如実に現れていた。


「分かりません。ただ、ロト殿下の話を聞いていると私達家族が穏やかに暮らしていた頃を思い出しまして、感情が自分で止められないような感覚に……」


「アタイもそうだった。アタイの仲間が魔族に殺された時の事を思い出しちまった」


 ロトの演説はそこまで皆の心に響くものだったのか? 俺がこの世界の住人ではないというそれだけの理由であの熱に飲み込まれなかったのだろうか。
 ……何かトリックがありそうだな。


「主、開会式が終わったら直ぐに受付が始まります。早めに向かいませんか?」


 目を赤くしたフランがそう言ってきた。まぁ考えても仕方がない。ただ、ロトには気をつけなければいけないな。


「ああ。行こうか」


 俺は財布から金をいくらか取り出してハリソンに手渡した。


「折角の建国記念だ。お前ら森の国の民と湖の国の民には関係ないだろうが、祭りは祭り。楽しんでこい」


 俺はハリソンとロージー、アイリスを見ながらそう言った。


「お前らも自由にしていいぞ。武闘大会を見物するもよし、買い食いするもよし。」


 俺はジェイドとアンバーにそれぞれ金銭を手渡す。


「カズキ様!」


 目を赤くしたアイリスが駆け寄り俺の服の裾を掴んだ。


「どうしたんだ?」


「私も連れて行ってください!」


「連れて行くって、武闘大会の見物ならすぐ始まるだろうからここで待ってればいいぞ」


「違います! 私も出場するんです!」


 出場する……? 誰が?


「は?」

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