異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第121節

 その日、俺達はロトの計らいで王城で一泊することになった。それも貴賓室として上等な部屋を宛てがわれた。
 さっきの今で俺はアイリスと一緒にいるよりも少し距離を置き、きちんとアイリスの中でも整理してもらおうと思い、部屋は別にしてもらった。
 元ロウ一家の三人部屋と双子メイド+フランの三人部屋。そして、俺専用の一人部屋。計三つの部屋を割り当てられた。
 しかも、各部屋に一人召使を付けるという高待遇。まぁ今の俺にはあまり有り難みがたみがないけど。
 そういやホールで用意された飲食類の中に俺がこの世界に持ち込んだ酒があったのには驚いたな。しかも、それなりの身分の人間が美味い美味いと飲んでる姿を見るのは滑稽だった。
 そしてその中にはフランも居て、泥酔する程飲んでいたのには苦笑するしかなかった。その介護としてジェイドとアンバーに押し付けたわけだが、ジェイドはともかくアンバーは少々恨みがましい目でこっちを見ていた気がする。まぁ無視したけど。
 そして俺の部屋にメイドが一人。年齢で言えば俺より少し年上だろうか。二十代半ばから後半、おっとりとしたお姉さん風のメイドだ。名前はマールといったか。


「カズキ様。お飲み物はいかがですか?」


「いや、いいよ」


 こちらの世界で飲み水は口にしないように気をつけている。衛生観念がどれほど進んでいるか知らないが、俺の弱い胃腸が生水に当たれば脱水症状は免れないだろう。


「それより、マールは使用人室に戻らなくていいのか?」


「今日一日はカズキ様に仕えるようロト殿下に言われておりますので」


「それにしたって、こんな夜分にいつまでも居ることないんだぞ?」


 むしろ、そこにいられると寝れない。
 俺は既にベッドに横になって、一メートルほど離れた所でマールは椅子に座っている。もし、マールがミニスカのメイド服だったならその下まで見えたかもしれないという位置関係だ。


「私のことはお気になさらないで下さい」


 ニコニコと笑うマール。しかし、気になるものは気になる。


「一晩中起きてるつもりなのか?」


「メイドたるもの座ったままでも寝ることぐらい簡単なんですよ」


 いや、まぁたまにアンバーが椅子に座ったまま寝てるけどさ。それはメイドとは関係ないんじゃないか?
 それとも武士は横にならず座って眠る精神みたいなものなのか?


「……そういうもんなのかな……」


 しかし、こうやって横に居られると見守られて安心して眠るっていうより、監視されて不安で眠れなかったりする。マールさえいなければ、いつでも現代に戻れるんだが……。
 俺はボーッと視線を彷徨わせていると、自然とマールと目があった。


「カズキ様はずいぶんとたくさんの奴隷をお持ちなのですね?」


「ん? ああ。まぁ奴隷は四人で残りの二人はクリスティーナ王女から預かってるメイドなんだけどな」


「そうでしたの。それでも奴隷を四人も所有するなんて凄いことですね」


「まぁ運良く商売が当たったからこそ手に入れられたって所かな」


「傍目から見ても彼女達はとても奴隷だとは思えないです。……ロト殿下が人の奴隷にまで気を回している程、カズキ様は信頼されているのですね」


「……どうなんかな」


 実際は信頼っていうより、利用されてるって方が俺の実感としてしっくりくる。


「……カズキ様は幼い女性が好きなのですか?」


「いや、そういうわけじゃないけど」


 確かに俺の身の回りにいる女性は総じて外見的に幼い。唯一フランだけがアベル人基準でいう成人した女性だ。


「…………」


 マールは椅子と一緒に俺に近づく。俺の鼻先とマールの膝まで三十センチもない。


「…………」


 マールは黙って俺の手を取る。


「マール?」


「私のような大人の女性はダメでしょうか?」


 そう言いながら、マールは俺の手を自らの胸元に引き寄せた。

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