異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第120節

 現状をどう思うか。それだって意味合いは色々とある。


「現状ってのはどう言う意味で?」


 魔大陸に行くって具体的な話はまだ言っていない。ただここ最近、俺が頻繁に王城に呼ばれている事を鑑みれば良し悪しはともかくとして何かが起こっていることは簡単に推測ができる。その事だろうか。


「今、カズキ様には私を含めて四人の奴隷と二人の召使がいます」


 ああ、そっちの話か。


「最初は私達三人。そこからジェイドさんとアンバーさん。最近ではフランさんがいらっしゃいました」


 確かに人数的には倍になっている。そう考えると人数が増えたって気がするな。


「ジェイドさんとアンバーさんはクリスティーナ王女から預けられたと聞いています。それに、フランさんはロト王子から譲り受けたとも」


 まぁアイリスの認識に間違いはない。その上で何を悩んでいるんだ?


「……最近のカズキ様はフランさんととても仲が良いように思えます」


「さっきもそう言ってたな」


 そこがアイリスの持つ悩みの種か?


「…………」


 アイリスは深い沈黙を保った。
 遠くから音楽が聞こえる。
 俺から話しかけるべきか、アイリスが話すのを待つか十秒程悩み、俺から話しかけるタイミングを見失った。だから俺は待つことにした。遠くで流れる音楽を耳にしながら。


「……私一人では不満なのでしょうか?」


 それがアイリスの悩みか。俺はそれを安易に否定するべきか否か。


「……アイリスに不満は無いよ」


 俺は安易に否定した。事実、アイリスに不満は無い。俺の言う事はきちんと守るし、努力だってする。今ではメイドが居るにも関わらず、それ以前と変わらず俺に尽くしてくれる。


「……いつまでもアイリスには俺の傍に居て欲しいし、俺を支えて欲しいとも思ってる」


 俺はアイリスの命を名実共に預かっている。俺はそれを軽く考えていた。
 酷い言い草だが、綺麗で可愛い便利なペットのように接していたかもしれない。ご褒美と称し、飴を与え、仕事を与えていたがアイリスだって人間だ。悩みもする。それこそ人間関係なんて最たるものだ。
 人の繋がりの数だけ面倒が増える。俺自身、分かっていたことだ。こうやって今もアイリスという人間と繋がって問題が増えた。
 現代での俺はそういった人の繋がりが嫌で一人で居ることが多かった。
 大学でも最少人数、それこそ上やんぐらいしか接する人間はいない。
 俺にとってアイリスは何なんだ。綺麗で可愛い俺の奴隷。その気になれば俺の肉盾にもできる人形だ。
 ……それでいいのか?
 俺はアイリスをどうしたかったんだ。
 アイリスに誰かの面影を重ねていただけなのか。
 単なる自慰行為に過ぎないのではないのか。
 社会的弱者に対し、俺は手を差し伸べることで優越感に浸っていただけではないのか。
 …………。違う。
 何が正しいかじゃないんだ。俺がどうしたいかなんだ。
 俺が今口にしたことは事実だ。
 アイリスに傍に居て欲しい。
 悩む前から口に出していたじゃないか。その言葉にきっと嘘はない。


「俺はお前が大事なんだ」


 俺はアイリスをぎゅっと抱き寄せた。
 自己中心的な考え方は昔から変わっていない。アイリスのためとかそういう事は一切考えない。俺は俺のためにアイリスが欲しい。だから手に入れたんだ。あの日あの時あの場所で。一目見て欲しいと思ったんだ。手に入れたいと思ったんだ。そして、手に入れる方法が俺の手の中にあった。だから迷いはなかったんだ。あの時の俺は純粋にアイリスを手に入れたかった。そして今、こうやって腕の中にいる。


「……カズキ様……」


「……心配させてゴメンな」


 ご主人様が奴隷に謝るなんて、こっちの世界じゃ有り得ないかもしれないけど、どうせ誰も居ないんだ。少しぐらい素直に謝ったって悪くないだろ。

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