異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第119節

 外、といっても王城の敷地内にある中庭だ。
 俺はホールを離れ、中庭に向かった。
 静かな中庭で少なくない男女が所々で親密に語らっている。そんな中、一人で佇んでいる少女は悪い意味で目立っていた。


「アイリス」


 俺はアイリスの背後から歩み寄って声をかけた。


「カズキ様?」


 アイリスは不思議そうに振りむいた。


「どうしたんだ? こんな所で」


 別に何があるわけでもない。手入れされた低木と芝生の上でアイリスが立ち尽くしているだけだった。


「静かな所で少し考え事を……」


 アイリスは歯切れ悪く言う。目線も俺と合わそうとしない。


「俺は邪魔だったかな?」


「いえ! そんなことは!」


 邪魔ではないらしい。むしろ、ここにいてくださいというニュアンスにも取れる否定だった。


「何か悩みでもあるのか?」


 俺も人が多くいる所より、一人でひっそりとしていたい性分だ。取り分け、パーティーを楽しめる気分じゃないなら尚更、人混みは避けるだろう。


「……悩みではないのですが……」


 ここでは言いにくいのか?
 俺は周囲を見渡すが、完全に二人きりになれそうな場所はない。
 見上げてみると、ぽっかりと空が見える。
 …………。
 俺は加重のベルトを外し、現代に送り返す。


「アイリス、俺の背中におぶさって」


「え?」


「いいから」


 俺が屈んで背中を見せるとアイリスは不思議そうながらも、俺の背中にぎゅっとしがみつく。
 うん。これぐらいの重さなら行けるだろう。
 俺はアイリスを背負ったまま、助走をつけて地を蹴り、壁を蹴り、バルコニーの手すりを連続で蹴った。アイリスは必死に俺の背中にしがみついていた。こっそり、左手だけはアイリスのお尻に添えた。別に下心があるわけじゃない。
 今の俺なら、力の指輪が無くとも垂直跳びで一メートル、助走があれば一・五mは飛べる。力の指輪があればその三倍は飛べる。アイリスの体重を考えても十分行けると思った。
 思ったとおり簡単に王城の屋根上に辿り着く。


「カズキ様!」


「どうした?」


「どうしたじゃありません! 私、怖かったんです!」


「ああ。それは悪かった」


 俺は謝りながら屋根上を確かめる。さすがにここまでは手入れがされてないか。
 俺はハンカチを取り出して、適当に屋根の汚れを落とす。


「取り敢えず、座ろうぜ」


 俺が先に座ってみせ、アイリスも渋々といった感じで俺の横に座る。


「ここなら誰もいないし、誰も聞いてないからさ。何かあるんだったらこっそり教えてよ」


「……そうですね……。カズキ様にしか訊けない事ですから」


「俺にしか?」


 アイリスは躊躇いがちに口を開いた。


「……カズキ様は現状の事をどうお思いですか?」

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