異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第118節

 サイラス王は魔族討滅の許可をロト殿下に与えた。
 たったそれだけのことだが、その判断材料として俺を扱った。たぶん、そういうことなんだろう。その時に言った『開かぬ扉を開けてはならぬ。開く扉を閉じてはならぬ』だったか。この世界における諺のようなものだろう。『出る杭を打つ』の反対の意味のように感じた。
 結局、俺の出番はそこで終わった。もっと他の兄妹達についても聞きたかったが仕方ない。もてなさなければならない賓客は俺だけではないのだ。むしろ、一番初めに賓客として王族の前に立てたのが俺というだけ光栄なのかもしれない。実際はロトに利用された形なんだろうけど。
 まぁその分、パーティーで楽しませてもらおう。
 俺自身、ダンスの経験は皆無のためダンスはパス。食事もそこまで惹かれないとなると楽しむべきはお喋りか。
 そういえば、アイリスの機嫌が少し斜めだったか。周囲を見渡してもアイリスの姿は見えない。
 俺はアイリスを探してみた。途中でハリソンとロージーの踊る姿が見えたが、あまりに身長差がありすぎ、ハリソンが前屈みになっていて園児の相手をする保父さんに見えなくもなかった。
 その二人を見守るようにジェイドとアンバーは壁際で佇んでいた。一応、二人共自由行動を与えてるんだから、料理の一つでも食べればいいのに。ああやって二人で並んでいるとたまにどっちがどっちだか分からなくなる。よくよく見るとピンと立っているのがジェイドで、少し気だるそうに見えるほうがアンバーだ。
 俺はそう思いつつ、もう少し見て回るとフランが貴族らしき男からダンスの誘いを受けている所だった。フランは焦り右往左往している。そして、俺の姿を見つけると男に何かを伝え、俺の所によってきた。


「主がいて助かりました」


「ダンスに誘われてたのか?」


「アタイにダンスは向いてないって言ったら、では外に涼みに行きませんかと言われて困ったもんさ」


「誘いに乗らなかったのか?」


「ああいう男はダメだね。背中を任せられるってアタイが思える男じゃないととても誘いには乗れないさ」


 まぁ背中を任せるってことは命を預けるって意味でもあるとすれば、冒険者間では面白い言い回しかもしれない。


「そうか。ところで、アイリスを見なかったか?」


「アイリスさんなら外だよ」


 あれ? フランってアイリスのことをさん付けで呼ぶのか。


「分かった。ありがとう」


「主の話ってのはもう終わったのか?」


「ああ。滞りなく」


 俺はそれだけ言って外に出た。

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