異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第117節

「カズキ、今度はお父様とお母様を紹介しよう」


 ロトは両親を背にして俺に紹介した。


「こちらがサイラス・サニング王。この国をここまで繁栄させた賢王とカズキも耳にしたことぐらいはあるんじゃないか?」


 まるっきりない。
 サイラス王はかなり年配に見え、老いている感がする。しかし、耄碌しているという印象は受けなかった。老成していると言っていいだろう。モリスはこの爺さんに似たんだろうな。あまり笑顔を見せず、気難しそうだ。


「そしてこちらがミランダ・サニング女王。お父様を支え、俺達を育ててくれたお母様だ」


 ミランダ女王。見た目は四十代ぐらいの女性。俺の守備範囲ではないが、綺麗な人だ。サイラスとはかなり歳が離れているだろう。ミランダは穏やかな笑顔を見せた。たぶん、クリスはこの人に似たんだな。
 こうやって見てみるとある違和感を感じた。サイラスは金髪、ミランダは栗毛だ。ある一人を除いて、全員がサイラスの血を引いて金髪なのに対し、モリスだけが髪色が紺色だ。
 俺の視線に気づいたモリスが更に不快そうな表情を浮かべる。


「お父様、お話がございます」


 ロトは急に畏まった。


「……なんだ?」


 寸前までロトは俺に対し笑いかけていたはずなのに、サイラスに向き直ると真面目な表情を浮かべた。


「近々、魔族を討つため軍を動かします」


「……そのことか……」


 サイラスの深いシワが更に深くなる。


「現在はカズキの働きもあり、国民の生活は徐々に安定に向かっています。しかしそれは仮初です」


「…………」


 サイラスは黙って聴く。ホールから聞こえる音楽がやけにうるさい。


「国民は疲弊しています。その原因は何か? 魔獣です。魔人です。魔族です」


 ロトは熱く語った。


「俺は魔族を討ちたい。国民が襲われる事の無いよう。明日の食事の心配をすることのないよう。隣人に疑いの眼差しを向けなくていいよう。俺は魔族を滅ぼしたい」


 ミランダはロトとサイラスを交互に見比べる。俺はロトから視線を外し、クリスとレオを見た。クリスはロトに注視し、レオとは視線があった。


「国内に潜伏する魔獣を一匹一匹、魔人を一人一人倒していてはいつまでも滅ぼせない。だから俺は海を渡ろうと思う」


 ミランダがサイラスの手に自分の手を乗せた。


「お父様。俺に魔族を討ち滅ぼすチャンスをください」


「……おまえか?」


 サイラスの視線は俺に向けられた。


「……いえ」


 どういう意図で聞かれたか分からず、思わず否定してしまった。


「…………」


 サイラスは黙り込む。ロトもまた黙る。俺も黙らざるおえなかった。


「……開かぬ扉を開けてはならない。開く扉を閉じてはならない」


 サイラスはポツリとそう漏らし、さらに続けた。


「……いいだろう」


「ありがとうございます。お父様」


 このやりとりの場に俺が居て良かったんだろうか?

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