異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第116節

 俺達はそのままダンスホールへと案内された。
 馬車がすれ違えそうなほど大きな扉をくぐると、絢爛豪華なダンスホールだ。可能な限り空間を広くとるためだろうか、太く長い柱があり、その柱には煌々と輝く石が何十個と取り付けられている。たぶん、魔光石だ。
 ホールの広さは具体的には分からないが、俺の通っていた高校の体育館ぐらいはある。およそバスケットコート三つ分だ。
 ホールの奥には階段が見え、それを上がれば二階に行けるようだ。二階は一階からでも見ることができ、そこに何人かいる事が分かる。遠目で分かりにくいが、レオの白い衣装は遠目でも判別できるから、傍にいるのがクリスだろう。その流れで言えば、あそこにいるのが王族四兄妹ということになるのか。
 ダンスパーティーは始まったばかりなのか、壁際に用意された料理はあまり減っていない。ダンスをしている男女が二十組ほど、お喋りをしている人間が五十人以上、百人未満。種族で言えば、アベル人が半分を占め、トール人、タイン人、シーク人が均等そうだ。3:1:1:1といったところだろう。


「カズキ殿、こちらへ」


 案内兵は俺達をホールの奥、王族が座している二階への階段まで案内した。


「ここから先はカズキ殿お一人でお願いします」


「……分かった」


 俺は他の連中にパーティー中の自由行動を許可して二階へ上がる。
 二階にはクリスとロト以外に四人いた。
 たぶん、王様と女王様、それからロトの弟とクリスの姉といったところか。


「やぁカズキ。来てくれたんだな」


 俺に最初に声をかけてきたのはロトだ。


「ロト殿下がお呼びだとお聞きしましたので」


 俺は意図的に慇懃無礼になるように接した。


「彼はおまえの客人かね?」


 かなり歳がいった王様が口を開く。俺の見立てでは七十代ぐらいだが、クリスの年齢を考えるともう少し若いかもしれない。


「ああ。俺の新しい友人のカンザキ・カズキだ」


 ロトが俺を紹介することで特徴的な反応を見せたのが二人いた。一人はクリスだ。少しだけ驚いているのは演技なのか素なのか。そしてもう一人はロトの弟、名前は知らないが全体的に暗い雰囲気を漂わせている感じの男だ。それでも顔立ちは整っているため、悲劇の主人公にすれば映えそうな気はする。そんな彼はつまらなさそうに俺から視線を逸らした。少し苛立っているようにも見える。


「初めまして、神崎一樹と申します」


 俺は異世界のマナーはまだ身につけていないため、現代での最敬礼でもって礼節を示す。


「……もしや、近頃名を聞く黒髪の異人とは君の事かね?」


 王様が俺に聞く。


「……それは分かりませんが、確かに私は異国より参りました」


「……君はアベル人ではないのかね?」


 うわー、結構答えにくいことをサラっと聞いてくるな。実際、俺はアベル人に似ているらしいがアベル人ではない。


「私は私自身をアベル人だと思ったことはこの土地に来るまで思ったこともありませんでした。しかし、この国の人々はアベル人だと思い私に接して下さいました。なので今では私はアベル人だと思っています」


「そうか……」


 種族の事を聞くに俺の事を魔族と警戒しているということか? それとも単に俺がアベル人とは違う点があるとこの王様は見抜いたのか?


「お父様、折角の機会ですのでカズキに俺の家族を紹介させてください」


「ああ」


「カズキ、こっちがクリスティーナ。俺の可愛い妹だ」


 紹介されたクリスはお姫様然として俺に微笑み返してくれた。


「こっちがアーサー。俺の自慢の妹だ」


 アーサーと言われ、一瞬弟のことかと思ったが、クリスの姉のことらしい。女性でアーサーと言えば、どうしても創作上のブリテンの王を思い浮かべてしまう。
 そして、このアーサー王女もまた凛々しくいる。顔立ちはクリスよりもロトに似ており堀が深く、可愛い系というより美人系。それも中性的な顔立ちだ。男装をすれば、女性ならば男に、男ならば女性に見えるかもしれない。
 そんな彼女は俺に対し、小さく会釈をしてきたため俺も会釈で返した。


「そして、こっちが俺の弟のモリスだ。良かったら、モリスとも友達になってくれ」


 少し暗い雰囲気のロトの弟。ロトとは対照的に覇気がなく華もない。ロトが俺に友達になってくれと言った時は露骨に嫌な顔をされた。それは俺が嫌いというよりも、ロトのその発言が気に食わないといった様子だ。


「この三人が俺の大事な兄弟だ」

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