異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第110節

 ロトと俺の関係の釈明をした結果、クリスとレオは納得はしてくれた。
 また、レオは気を利かせてくれ、フランの武闘大会への出場枠を確保してくれると申し出てきた。
 俺はそれを快諾した所で話は終わり、帰途についた。


 翌日も特に何をするというわけもなく、魔動車の開発に取り組んだ。
 合間にフランのミラーシールドが用意できたとの報せを受け、オルコット商会に向かう。メンバーは俺とアイリス、フランだ。道中、ふと気が付くと、街中の人が増えているような気がした。今まで九割以上がアベル人だったのに対し、今はアベル人が半分ぐらいしかいない。
 まぁ俺自身の周囲には異種族の人間しかいなかったため気が付くのが遅れただけだが、それにしても多い。
 特に身なりがいい観光客や、物品を多く持つ商人、武器を携帯する武人といった普段に比べ見慣れない人達が増えている。
 オルコット商会でも人はあふれかえっていた。馬車の長蛇の列がそれを物語っている。


「カズキさん!」


 セシルが珍しく表に出て取引をしている。
 俺はセシルの傍に近寄った。


「なんかやけに大入りだな。どうしたんだ?」


「明日に式典を控えてるんですよ。なので、前日にもかかわらずこれだけ来てるんです。それにしても、ここ数日、いらっしゃいませんでしたが何かなさってたんですか?」


 最近は魔動車の開発に忙しかったからな。商品の棚卸は今ではロージーの仕事だ。まぁ助手としてハリソンを付けてるから大丈夫だろう。


「ああ。ちょっと本業の方をね」


 工業大学の工学部出身の本業といえばある意味本業だ。


「新しい取引ですか? それなら私にも一声かけていただけると嬉しいのですが」


 そういや、俺の職業は対外的には商人になってたっけか。本業が学生だと言っても信じてもらえるだろうか。


「いや。商売じゃないんだ」


「それでは新しい仕入れルートの開拓ですか?」


「いや、それも違う。それよりさ、俺の名義で注文してた盾はあるか? ピカピカに磨いた銀の盾なんだけど」


 少し強引に話を変える。


「ありますよ。すぐに用意させますね」


 セシルは部下らしき男達に指示を与え、銀の盾を用意させた。大きさにして直径四十センチ程の円盾だ。種類的にはバックラーに相当するのだろう。どっしり構えて守る盾というよりも攻撃を弾き受け流すための盾だ。片手剣の対になる盾といえばこれしかないだろう。
 俺はそれを受け取り、反射の魔宝石を組み込む。


「フラン」


 俺は名前を呼んでフランに持たせた。


「あれ? 新しい奴隷を所有なされたんですか?」


「まぁな」


「もしかして、フランってあの『赤き獣』のフランさんですか?」


「赤き獣?」


 そういえば、フランはレオの事を『白き雷』と呼んでたことがあったか。そういう通り名のようなものがフランにもあるのか?


「ええ。冒険者の中でも屈指の実力者だったシーク人の女性です。何でも美しい赤い髪をなびかせながら戦う姿が上質な毛並みを持つ伝説上の霊獣のようだったと言われてたんです」


 フランは受け取った盾で顔を隠している。たぶん、恥ずかしがってるのかもしれない。


「へぇ、赤き獣か。どうせ女の子につけるなら、紅の戦乙女とかにしようぜ」


 まぁあれは死神の別名みたいなもんだけど。


「あ、主……」


 フランは一層恥ずかしそうにし、背中を丸め、その背中をアイリスがさすっている。


「そういえば、フランさんも武闘大会に出場されるんですか?」


「ああ。レオに少し融通を利かせてもらったんだ」


 まぁこれも一つの人脈だ。


「それにしてもお二人で出場なされるなんて、今年の武闘大会は大変楽しみにしてます」


「ん? 二人?」


「はい。今朝から出場者のリストが公開されて、オルコット商会が胴元で賭けをしているんですよ。誰が優勝するか皆さん真剣に考えていらっしゃるんです」


 セシルは笑って商会の方を指差す。そういえば、今までにない大きな掲示板があった。


「カズキ様」


 アイリスがいつのまにか俺の傍に近づき、そっと耳打ちをしてきた。


「出場者のリストの中にカズキ様のお名前があります」


 ……はぁ?

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