異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第104節

 フランは武器屋のおっちゃんから片手剣と大剣を一本ずつ購入し、砥石と油をおまけしてもらった。
 そういえば、この世界で武器屋に頼むの研磨といえば包丁を磨くような平たい砥石ではなく、回転式の砥石だった。動力は魔力で魔宝石が使われている。
 初めて見る機械仕掛けの砥石。名付けるなら魔動機械式回転砥石だろうか。
 俺はこれを見た時、もっと色んなことに使えないだろうかと思った。
 フランには悪いけれど先に邸宅に戻ってもらい、俺は魔宝石職人であり魔法石商人でもあるアメリアを訪れることにした。


「あら、いらっしゃい」


 以前とは異なり、アメリアはカウンターに腰掛けている。手元で何かをしていたようだが、俺の死角のため手元は見えない。


「たんまり稼いできたぜ。魔宝石を売ってくれ」


「いいけれど、どんな物がいいかしら?」


 そう言われ俺は少し逡巡し、ポケットから吸魔石を取り出す。


「この吸魔石に蓄えた魔力で使える魔宝石に限定する。それとあまり出回っていないものが欲しい」


「あら、希少種が欲しいのね。バーナード、十年ぐらい前に手に入れた遠見の魔宝石を出してちょうだい」


 奥にいるであろうバーナードは返事もせず、数秒後に件の魔宝石を持ってきた。綺麗に磨かれた水晶だ。


「これは遠くの景色を見ることができる魔宝石なの。だけれど、遠くの景色を見ようとすればするほど、魔力の消費が多くて並の人間じゃ扱えないの。だけれど、吸魔石があるなら話は別よ」


「遠くの景色を……」


 それなら望遠鏡でもいいんじゃないだろうか?


「見える景色はどんな風なんだ?」


「そうね。例えば、あなたの目にする地点が変わるといえば伝わるかしら? この魔宝石を使えばあなた自身が動かなくとも、この店の外を見ることができるし、その気になればこの国の外だって見ることができるわ」


 ……千里眼ってことか。


「使い方は?」


「簡単よ。魔宝石を動かないようにして魔力を与えれば後はあなたの意識次第で自由に見ることができるわ。ただし、発動した直後に離れた場所を見ることはできないの。発動したら、発動した地点から視界だけが移動するのよ。そして見ているあなたに気がつくことは決してないわ」


 言い方はおかしいが、見えない目玉だけが宙に浮いてゆっくり移動するようなものか。


「分かった。買おう、いくらだ?」


「金貨で二十枚」


「二十枚!?」


 さすがの俺だって驚く。魔宝石の相場といえば金貨数枚がいいところだ。希少種ともなればここまで値段が跳ね上がるのか。


「買うの? 買わないの」


 アメリアは挑発的に笑う。


「……買う」


 それだけの価値があると俺は思った。

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