異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第103節

 白シャツにジーパンの上から装備を着込んだフラン。
 何層にも重ねたハードレザーアーマー。心臓を守る鋼の胸当て。洒落た編み上げの革ブーツ。磨かれ輝く鋼のガントレット。
 それらを装備したフランは一見、外国人コスプレイヤーに見えてしまう。現代を舞台にしたバトル物のヒロイン。そんな感じだ。


「良かったな。自分に合う装備が見つかって」


 丈合わせの必要もなく、買ってその場ですぐ装備。これも一種の巡り会わせかもしれない。


「おっちゃんには感謝してるさ。アタイの装備を保管してくれて……アタイが手放した時よりずっと質が良くなってる。あの頃は装備の手入れをする時間すら惜しんでたからさ」


「この調子なら武器の方もすぐに見つかりそうだな」


 装備一式が金貨一枚で手に入った。中古ということもあるだろうが、安く手に入ったのは悪くない。それがフランの持ち物だったって事は質としても決して悪いという事はないだろう。


 次に訪れたのはもちろん武器屋。刀剣や槍、弓といった武器が店内に並んでいる。
 その中でも特に目を引くのが刃幅五十センチ、刃渡り二メートル、柄長さ一メートル程の片刃の大剣だ。一体どんな敵を想定しているのだろうか。それとも観賞用か。筋力増強の魔宝石を身に着けた俺でやっと持てるかどうかといったところだろう。
 そんな感じで店内を再び物色する。


「おっちゃん、久しぶり」


「ん? フランじゃないか! お前さん、どうしてたんだよ!」


 店主のおっさんは血相を変えてフランに言い寄った。


「悪いな。長いこと留守にして」


 フランは笑って店主に謝った。
 今のフランは装備で身を守っているため、奴隷の首輪は露出していない。


「最近は他の連中も目にしないし、てっきり引退したか別の国に渡っちまったかと思ってたんだぜ」


「まあ色々あったんだよ。それよりさ、新しい武器が欲しいんだけど何かあるかい?」


「そうだな……。前に使ってた武器と似たようなもんがいいよな?」


「ああ。金なら少し余裕があるからさ、質の良い奴を頼むよ」


「分かった。少し待ってな」


 おっさんはそういって店の奥に入っていき、しばらくすると一振りの片手剣と一振りの大剣を持ってきた。
 片手剣の方は全長一メートル程、両刃で鞘付き、柄には魔宝石らしき物が埋め込んである。
 もう一方の大剣は全長一メートルと八十程、片刃で幅広、ついでに刃厚もある。こちらにも魔宝石らしき物が二つ埋め込んである。


「こっちが衝撃緩和の魔宝石入りの守護剣、こっちは筋力増強と魔術障壁付きの対魔人剣。セットで金貨六枚だ」


 軽く予算オーバーだ。


「随分と安いんだな?」


 フランはそう言う。きっと、本当に安いんだろう。


「フランの復帰祝いだ。それに国軍が装備をたくさん購入していたおかげで、一時的に武器の仕入れが多くなったんだが、少し在庫を抱えちまってな。今は少し安めにはけさせてんだ」


「そうか。少し待ってくれ、金の都合がつくか考える」


 そう言ってフランは俺の所にやってきた。


「話は聞いてたけど、本当に金貨六枚の価値はあるのか?」


「魔宝石だけでも金貨四枚以上の価値はあるだろうし、武器だけを見ても金貨二枚であの二本は買えないだろうね」


 武器の目利きは全く分からない俺からしてみれば、フランの判断に頼るしかない。今更金貨二枚の出費で傷む腹ではないつもりだ。


「分かった」


 財布から金貨を二枚取り出し、フランに渡す。


「主、いいのか? 片手剣はともかく、大剣の方は対魔人用の武器だ」


「まぁあって困ることはないだろう。そういえば、剣の手入れの砥石とか油とかいらないのか?」


「あの店主とは馴染みだからな。交渉次第では付けてもらえると思う」


「なら任せた。それで手に入らないようなら、また来てくれ。金の用意だけはしておく」


「頼もしい主だ」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く