異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第102節

 翌日。
 フランに俺のシャツとジーパンを貸して着替えてもらった。幸いにも俺自身は太腿が大きいため、フランの脚も十分に入った。だが、ウェストの方はブカブカだったのでベルトで無理矢理締め上げた形になっている。
 さすがにあのボロ布のまま街中を歩くよりはマシだろう。
 まぁフランはこの街で長らく冒険者をやっていたらしいし、知り合いにあった時にボロ布だと可哀そうだと思った面もある。
 他の連中には邸宅の手入れ及び、自由行動を与えた。
 目下、急ぐ仕事は無く日銭の心配もない。新居でのんびり過ごさせてやるのもいいだろう。


「まずは何から見て回ろうか」


 この街に関しては俺よりもフランの方が詳しい。


「まずは防具から見て回りましょう」


「防具から? 武器からじゃないのか?」


「護衛の任である以上、武器よりも防具が優先されます。それでなくとも、戦闘において防具が劣っている人間は真っ先に狙われますから」


 まぁそりゃあガチガチに固めた壁役より、柔らかい後衛を殴りに行くのはゲーム世界でも一緒だ。


「納得した。それじゃあ行こうか」


 フランを先頭にし、俺は付き添う形だ。
 現代衣服の二人組が異世界を歩くだけで周囲から浮いている感はある。それにしても、フランの褐色肌に白いシャツが映える気がする。褐色娘が特別好きというわけではないが、エキゾチックな風貌に何も思わないわけではない。
 サニングは圧倒的にアベル人が多く、そのほとんどが白色だ。なので、フランはもしかしたら俺以上に浮いているかもしれない。


「主、ここがアタイが世話になってた店だ」


 フランの口調では過去形だが、これからも世話になる事だろう。
 中に入ると革鎧や金属鎧が壁に掛けられている。客も数人いるため、そこそこ繁盛しているのかもしれない。
 買い物自体はフランに任せ、俺は店内を見て回る。


「おっちゃん。久しぶり!」


「ん? おお、フランか。随分久しぶりだな」


 俺は商品を物色しながら聞き耳を立てる。
 どうやらフランは顔馴染みであろう店主と言葉を交わしているようだ。


「お前さん、どうしちまったんだ? その首輪? まさか、奴隷になっちまったのか?」


「まぁ色々あってさ。奴隷になっちまったけど、今の待遇は悪くないさ。もしかしたら、冒険者時代より快適かもしれないさ」


「そうかいそうかい……」


 店主のおっさんはフランの言葉が強がりと受け取ったのか、同情する視線をよこした。


「おっちゃん、良い防具はないか? 金なら少しだけあるんだけど」


「あー、少し待っとくれ。


 おっさんは一度奥に引っ込み、年季の入った防具類を持ってきた。中古っぽい。


「これは……もしかして、アタイの……」


「ああ。お前さんが顔を見せなくなってから、これを売り払いたいって商人が来てな。鑑定してみたら、お前さんが使ってた防具と瓜二つだと分かった時には冒険者を引退したか、死んじまったか、何にしろ寂しくなるなと思って形身代わりに取っといたんだ」


 おっさんが防具類をカウンターに並べる。急所を守る胸当てや防寒に優れた厚い革鎧、少し洒落た編み上げのブーツ、丁寧に磨かれ白色の金属光沢を持つガントレット。


「あのころのまんまだ……」


「一応、手入れは欠かしてねぇぞ」


「おっちゃん、これを売ってくれ!」


「もちろんそのつもり、といいたところだけど……これの買い取りに金貨一枚かかったんだ。今すぐには無理だろうけどさ、それまではきちんと手入れをしておくから金ができたらまたおいで」


「金ならある」


 フランはすぐさま金貨を一枚取り出した。


「随分と羽振りがいいんだな?」


「アタイの主は随分と気前がよくてね。装備のために支度金を用意してくれたのさ」


「そりゃあ奇特な人だな。何にしても、俺が思ったより待遇は良さそうでよかった。それじゃあ、こいつらはお前さんに返すよ。すぐに着替えてくかい?」


「そうだね。そうさせてもらうよ」

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