異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第98節

「どうかしたか? フラン」


「……アタイは主のために何をすればいい……」


 何をか。フランにしてもらう仕事は今すぐあるわけじゃない。


「確認だが、フランは冒険者だったんだよな?」


「……はい」


「どれぐらいの腕だったんだ?」


 冒険者といってもピンキリだろう。それこそ、奴隷になる程だ。あまり腕が良いわけじゃないと俺は邪推するが、ただの冒険者をロトが寄越すわけでもないという穿った見方もできる。仮に愛玩用として差し出されたとしたら、口に出しては言わないが、もっと適切な人選があったようにも思う。


「……この国では少しは名の知れたチームにアタイは所属していたんだ。チームとして魔人を倒したことも一度や二度じゃない」


 魔人と戦闘経験があるのか。ちょっと見直した。


「それだけ腕が立つなら、どうして奴隷なんかになったのさ」


 そこが一番の気がかりだ。さっきは言いたくないなら言わなくてもいいなんて気を遣ったが、実際はとても知りたい。


「……アタイ達のチームの一人が病気になっちまってな……。薬草や治癒魔術でどうしても金が必要だったんだ。短い付き合いだったら、すぐにチームを解散なんて選択もあったんだろうが、アタイ達は十年以上も一緒にチームとして戦ってきたんだ。だから、簡単に見捨てられなくてさ……」


「それで金を借りて、でも返せなくて奴隷ってわけか?」


「……ああ」


「一体どれだけ借りたんだ?」


 シーク人の奴隷としての相場は確か金貨十枚弱だ。


「金貨五十……」


「五十!? 相場の五倍じゃねぇか!」


 俺の手持ちにある金貨の半分にあたる。俺が金に困ってないからってロトも簡単にフランを手渡すのか!? いやまて、フランが借りたのが五十枚ってことはロトは一体いくらでフランを引き取ったんだ?


「フラン、ロトがお前を引き取った時はいくらの値が付いてたんだ?」


「……恥ずかしい話だが、金貨八十枚だ」


 いや、ある意味誇っていい値だぞ。
 というか、ロトもなんて金を出してるんだ……。
 でも、それだけの価値がフランにあるということの裏付けにもなる。


「凄いな。それだけフランの実力が認められているってことか」


「そう言われるとなんだか複雑な気分だな」


 本当に複雑そうな表情を浮かべるフラン。困り眉で苦笑いしてる。


「そうだな。フランには護衛をしてもらおうか」


「護衛をか?」


「ああ。俺や奴隷達には近接戦闘の心得なくてな。ハリソン以外の全員は実戦経験そのものも無さそうだし、フランにはあいつらを守ってもらいたい」


「主は守らなくていいのか?」


「俺を守る優先度は低くていいさ。たぶん、並の人間よりは強いよ」


「しかし……」


「一応、クリスティーナ王女親衛隊の副将、レオ=ルーカスって奴にも模擬戦で一本取ったしな」


「レオ=ルーカス……。もしかして、あの『白き雷』か?」


「いや、そんな二つ名聞いたことないけど」


「武術のみの腕で言えば、この国で五本の指には入る男だ」


 あいつ、そんなに強かったのか。


「あの白き雷に主が……それは凄い」


「そういや、ロト殿下も腕が立つって聞いたぞ?」


「ロト殿下は武術のみの腕で言えば国内で十本の指に入る男だ。しかし、魔術と武術の両方を使わせればあいつは国内で三本の指に入るだろう」


 フランは饒舌に話してくれた。どうやら、剣の腕やら戦闘の話題が好きらしい。俺もわりと興味があり、男女の会話には相応しくないが、とても面白い時間を過ごせた。

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