異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第96節

「魔大陸?」


 まぁ文字通りの意味で言えば、魔族の住む土地。海の向こう側ってことだろうか。


「ああ。魔族を倒す軍力も揃え、タイン人の協力で操船術も備わった」


「だったら、もう侵攻してもいいんじゃ?」


「だが、補給路が足らん」


「補給路?」


「ああ。タイン人の協力で海向こうに兵を送ることはできる。しかし、物資を運ぶにも船がいる。ただでさえ長距離進軍だ。時には海が荒れ、船が出せないこともあるだろう。兵糧のない軍なんぞ、魔獣にも劣る」


「つまり、その問題の解決策として俺が必要と?」


「そういうことだ。お前が自国の商品を仕入れる方法については謎に満ちている。お前が今泊まっている宿に誰も何も運び入れていないにもかかわらず、無いはずの商品が出てくる」


 そりゃ不思議に映るだろうさ。


「どんな力によって物品を国内に密輸をし、手元に揃え、商会に卸しているかはこの際いい」


 いいのか。


「ただ尋ねたいことは一つだ。ここサニングより、魔大陸へ物資の運搬ができるかどうか。それがお前に求める能力だ」


 なるほど。やっと話の核心に来たか。
 ロトにとっては俺がもたらす商品よりも、俺が持っている不思議な運搬能力、つまりIGそのものに用があるわけか。


「できるさ」


 ロトの笑みはますます濃くなる。


「そうか」


 ロトは肩で笑い、上機嫌に見える。


「お前の能力への対価としてフランと吸魔石を用意した。どうだ? 決してお前にとって損はないはずだ」


 もう俺の腹は決まっていた。


「その条件、飲もう」


 条件としては悪くない。特に吸魔石は俺にとって、非常に助かる。フランに関しては……まぁよく分からん。ただ、ゲーム脳の思考をすれば、俺のパーティーは前衛が少ない。ここで壁役一枚いればパーティーとしてバランスが良くなるぐらいの考えだ。


「よし、契約は成立だ。フランと吸魔石は持ち帰ってもらって構わない。それと、勝手だがこちらで新たな住処を用意させてもらった。あの安宿ではどこに聞き耳を立てられるか分からんからな」


 俺が契約する事を前提としていたみたいだ。少し面白くない。


「……どんな所なんだ?」


「最近没落した貴族から徴収した別荘だという話だ」


 なら、それなりの広さはありそうだ。


「分かった。近々、そっちに移ろう」


「いや、今日から早速移ってくれ」


「今日から?」


「ああ。お前が泊まっていた宿には既に話を通してある」


 それはまぁ話が進んでいるこって。


「……まぁそこまでお膳立てしてもらってるならいいか」


「では、今日はもう帰ってもらって結構だ。新たな住処には俺の私兵に案内させよう」


「それはどうも」

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