異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第95節

 ロトが用意した物は大別して二つ。女と魔宝石だ。


「俺の下に着けばこれらを全てやろう」


 俺は用意された品物を見定める。
 女は奴隷のようで首輪を付けている。種族は……噂に聞くシーク人だろうか?
 筋肉質で引き締まった体。ボロきれから除くお腹がやや薄く割れている。シーク人の大きな特徴として挙げられる褐色肌も見事だ。そして、肩まで伸びた赤毛が眩い。


「そいつは元冒険者のシーク人だ。冒険者時代に作った借金で奴隷になった所を俺が買い取った」


 元冒険者か。
 女の目つきは鋭く、かなり好戦的なタイプのようにも見える。


「ほら、自己紹介をしろ」


 ロトが女に顎で指図をする。
 女はそれに応え、わずかに一歩前に出る。


「……フランだ」


 苦渋の表情でぶっきらぼうに答える。


「なかなかに気骨が有りそうなやつだろう?」


 まぁ見た目だけなら十分に迫力はある。


「それとこっちだ」


 フランの紹介はこれで終わりなのか、次の品物を紹介するロト。


「これは吸魔石という珍しい種類の魔石でな。魔石の魔力を吸収し、蓄える性質を持っている。かさばる魔石から魔力のみを抽出する性質を持っている」


 見た目は黒紫色の光沢を持つ石だ。


「魔力を吸収された魔石はどうなる?」


「見た目は何も変わらないが、魔力は空になる。要はただの石っころになるわけだ」


 ……滅茶苦茶良いじゃねぇか。


「この石は王族に仕える宮廷魔道士にのみ所持を許可され、市場には出回らないものだ。いくら金を積んでも、まず手に入らん」


 非売品ってわけか。


「……そういうことね。オーケー。分かった」


 交渉の席に着くだけの価値はある話だ。


「カズキ、お気に召したかな?」


「ああ。もっと具体的な話をしよう。殿下は俺に何をさせたいんだ?」


 俺は本腰を入れて本題に入る姿勢を見せた。
 ロトはにやりとした顔を浮かべ、召使達とフランを退出させた。
 今この場にいるのは俺とロトだけだ。


「……そうだな。まず、俺達が魔族の討伐のために軍を編成していることは知っているな?」


「聴いてる。クリスティーナ王女から」


「どこまで聞いている?」


「……大量の魔獣発生に対しての討伐のため、と」


「そうだな。……表向きはな」


「表向きは?」


「ああ」


 ロトはわずかに言葉を選びながら話す。


「俺が目指しているのは魔族の討伐なんて小さい物じゃない。魔族の土地、魔大陸への侵攻だ」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く