異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第89節

 オルコット商会に着いた俺達は早速、セシルを呼び出した。


「どうかしましたか、カズキさん?」


「ああ。ちょっと大変なことになってな」


「大変なことですか?」


 セシルが少し不安気に尋ねてきた。


「まぁ俺の不手際なんだが、米の手配をしていたら馬車に乗り切れなくてな。こんな時間で悪いけど、引き取って欲しいんだ」


「もう準備できたんですか!?」


 静かな夜に一際大きいセシルの驚きの声が上がる。


「ああ。とりあえず、3トン弱は用意したから置かせてくれ。金とかそういうのは後でいいから。人手がないなら、俺が運び入れてもいいし」


「いえ、カズキさんにそこまでしていただくわけには参りません。少しお時間を頂けますか?」


「ああ。それはいいけど」


 俺がそう答えたのを聞くとセシルはすぐに人を手配してくれ、馬車から次々に米袋を運び出してくれた。
 馬車が空になるのを確認した俺はもう一往復して米袋全てをオルコット紹介に卸した。


「本当に手配して頂けたのですね……」


 セシルは言葉が続かなくなっている。


「まぁ少し遅くなったけどな。とりあえず、明日からこれは売りに出すのか?」


「そうですね。市場の価格を安定させる必要があるので、明日から売りに出すつもりです」


「そっか」


「それと、こちらが今回の取引の総額です。確認してください」


 そう言ってセシルは金貨を何枚か俺にくれた。確認すると12枚あった。


「あ、セシル。悪いんだけどさ、今度からは金貨じゃなくて魔石でもいいから」


「魔石ですか?」


 セシルは腑に落ちない顔で尋ね返してきた。


「ああ」


「本当に魔石でいいんですか? 魔宝石ではなくて?」


「ああ。今は何より魔石が欲しい」


「分かりました。いくつほどご用意しましょうか?」


「そういや、オルコット商会で魔石はいくらで売ってるんだ?」


「1つで銀貨2枚と大銅貨5枚ですね」


 確か、一番最初にセシルと出会った時は魔石1つで銀貨2枚だった。大銅貨5枚分がオルコット商会の利益ってことか。


「分かった。それじゃあ、この金貨を全部魔石に替えてくれ」


「全部ですか? 本当に全部でいいんですか?」


「ああ。頼む」


「分かりました」


 セシルは人を呼んで魔石を準備させ、俺はそれを受け取った。500個弱の魔石ともなればそれなりに重い。まぁ筋力増強の指輪のおかげか体感としては軽いけれど。


「ありがとう。セシル」


「いえいえ。カズキさんのおかげで物価の高騰もある程度は落ち着くかもしれません。こちらこそありがとうございます」


「米は明日から売りに出されるのか?」


「そうですね。今もかなり食品価格が高騰気味ですから、様子を見つつ売りに出します」


「分かった。とりあえず、当面は食料品を持ち込めば買い取ってはくれるんだな?」


「はい。今は食品が一番売れ筋ですので、こちらとしても助かります」


「分かった。何かいいものがあれば持ってくるよ」


「はい」

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