異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第88節

 俺はアイリスを落ち着かせ、思案する。
 さてと、意味は大きく違うがこの米騒動をひと段落させなければならない。この時間はオルコット商会も閉じているだろうが、無理を言えば取引はしてくれるだろう。


「アイリス、御者はできたよな?」


「……はい」


 まだ意気消沈しているが、俺ができない以上アイリスに頼むしかない。
 アイリスに指示してもらいながら俺は馬に馬車を連結させた。近よるとやっぱり、馬はでかい。
 そして、御者台にアイリスを乗せ手綱を握ってもらう。


「それじゃ行こうか」


 アイリスは馬に指示を与え、馬車はゆっくりと動き出す。やはり、1トン以上を積載した馬車はかなり重いのか、スピードが出ない。まぁ急ぐ必要もないためこのペースで問題ない。
 荷崩れも起こさないことを確認した俺はアイリスの隣に座る。


「ほら」


 酔い止め代わりの飴玉をアイリスに手渡し、俺も口に入れる。最近、飴玉が手放せなくなっている気がするな。


「ありがとうございます」


 俺とアイリスは飴玉を口の中で転がしながら、夜の街をゆっくりとしたスピードで進む。こうやって見ると、夜の街でも活気がある場所と無い場所があるな。
 道の端で寝ている者もいれば、物乞いをしている者もいる。そういった街の昼の顔と夜の顔がはっきりと違って見えた。中には子供の姿も見え、この世界にも当たり前のようにストリートチルドレンがいるようだ。


「カズキ様はあの方達を見て、どう思いますか?」


 アイリスが突然訊いてきた。俺があいつらを見ている事に気付いての発言らしい。


「どう思うも何もないさ。気分が良ければ施しもするし、気分が乗らなければ施さないし。助けたい気分になれば助けるし、自助努力の応援だってするさ」


「自助努力?」


「自分を助ける努力、簡単に言えば自立の事。俺の国でよく挙げられる例で言えば、腹を空かせた子供と釣竿があります。あなたならば、どのような行動を取るでしょうか? って問題。アイリスならどう答える?」


「私なら、お腹を空かせた子供のために川魚を釣ってあげます」


 ああ、この世界だと魚といえば川魚になるんだっけか。まぁいい。


「俺も昔はそう答えるのが普通だと思ってたんだけど、この場合は子供に釣りの仕方を教えるってのがもう一歩踏み込んだ答えらしい」


「釣りを教えるんですか?」


「そういうこと。自分で釣りをして、自分の糧を得る。これが自助努力。それで、釣りの仕方を教えるのが自助努力の応援」


「そういうことなんですね」


「まぁ人に物を教えられるほど賢くはないんだけどね」


「私から見れば、カズキ様は十分に賢いと思いますが」


「まぁこっちならそうかもね」


 俺はあまり自分の頭の出来がいいと思ったことはない。上を見れば上がいるし、下を見れば下がいる。結局は自分の頭の出来なんてそんなものだ。


「まぁ何にしても、自分で自分を助けようとする意思がない奴は俺なら放っておくね」


「……そうなんですね」

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