異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第87節

 セシルから筋力増強の魔宝石を受け取り、魔宝石は指輪に加工されているため、嵌めてみる。
 体感としてはあまり変わらないため試しにとアイリスを抱えてみたら、今までも十分に軽かったが、今はそれ以上に軽い。イメージとしてはアシスト自転車とかあんなのに近い。俺が力を発揮しようとすると自動でサポートしてくれる感じだ。また、この魔宝石は俺でも使えることから周囲の魔力を使うタイプのようだ。これなら魔石を向こうに持っていきさえすれば使える。


「ありがとう。セシル」


「いいんですよ。これくらい」


 俺はセシルに礼を言って、すぐに宿に戻り現代へと跳ぶ。
 さてと、本格的な仕入れ活動だな。
 俺はA3サイズのイラストを準備して、コストパの最寄のIGへ跳ぶ。以前訪れた時はあまり気にしなかったが、この店には地下駐車場があり、そこならカートを押して行っても怪しまれないし、人目を避けられる死角も多い。
 下見をした俺は近くの銀行で60万のうち10万を下し、それを全て米に替えた。
 似合わない指輪をした甲斐があり、魔石を所持さえしていれば10キロの米も体感で半分以下の重さに感じる。それをカートに次々に入れ、10キロを10袋の計100キロを会計する。とにかく安い米を選び出し、大量に仕入れる。
 そのまま地下駐車場に移動して、A3イラストを地面に敷き、米袋をそのまま落として転送する。米の転送先は馬車だ。今もアイリスがせっせと米を馬車内に敷き詰めている頃だろう。一応、魔法と魔石を使う許可は出しているため、少しは楽をしているだろう。
 俺はそれを後4往復し、10万の金を全て米に替えた。すると、最安値の米の銘柄が無くなってしまったため、二番目に安い米をまた10万で交換する。
 さすがに何度も米を買いに来る客が珍しいのか、店員が俺の顔を見るたびにまたかといった顔をする。
 すみません。
 でも、さすがコストパ。三トンの米を在庫に抱えていたことに驚きだ。おかげで店頭に並んでいた米が明らかに少なくなっているが、きっと明日には補充されている事だろう。
 店を出ると日はすっかり没し、街灯が明々と照っている。


「戻るか」


 俺はA4イラストに腕を突っ込み、もう片方の手でイラストを破り、全身を転移させる。
 向かう先はやっぱり宿だ。


「アイリス?」


 宿にはいない。まだ馬車らしい。
 俺はアイリスを探しに厩に向かう。すると、半泣きになったアイリスが厩の前で蹲っていた。


「どうした? アイリス?」


「カズキ様!」


 少し目が充血したアイリスが俺に駆け寄り、抱きついてくる。


「どうかしたのか?」


 俺はアイリスの頭を撫でながら話を聞いてみた。


「お米がたくさん出てきて……最初は馬車に載せてたんです。でも、どんどん出てきて……馬車がキシキシって音が鳴って……それで一生懸命外に出そうとしたんですけど、それでもどんどんお米が出てきて……一人でどうしようかって思って……」


 ああ、確かにそれは怖いな。いつまでも荷物が出てきて、自分一人だけで対処しなきゃいけないって思ったら、そりゃ怖いか。いつ終わるかも分からない。周りに誰もいない。


「ああ、悪かったな。大丈夫、何も問題はないから」


 俺は頭を撫でながら、厩の中を覗く。
 馬車にはこれでもかというほど米袋が積載され、それでも余ったものはそのまま床に置かれている。俺の目算では、あの馬車には半分ぐらいしか乗らず、残りの半分が床に置かれている。


「よしよし。頑張ったな」


 俺はアイリスが落ち着くまで抱きつかれたまま頭を撫でた。

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