異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第86節

 今回の資金調達はこちらから商品を提供するのではなく、オルコット商会側が欲している商品を聞いてから調達する形式をとる。ある意味での市場調査だ。
 そして今、セシルと俺とカンナの三人で商談室で相談し合っている。小窓から差す陽光もあり、蝋燭に火は付けていない。


「今、オルコット商会が欲している物ですか?」


「ああ。今まで俺から提供した物でもいいし、こういうものがあれば助かるといった意見だけでもいい」


「そうですね……」


 セシルは少し思案してから、口を開いた。


「まずは食糧ですね。どんなに良い商品があっても食料価格が安定していないため、あらゆる商品の流動が停滞気味なんです。安定した食料があって初めて、余裕を持ったお客さんが他の商品に手が出ます」


「なるほどね。確かにそれはその通りだ」


「今では保存ができる食糧の買い占めなどで異常なまでに高騰している食糧もあります。市場の在り方としてはとても見過ごせない現状です」


「つまり、第一に食糧で他の商品は二の次って事か」


「そうですね。上流階級の方々相手の商売であれば、このような話をカズキさんにしても仕方がないと思いましたが、前回お持ちいただいた食料品の数々は十分この国のお客さんに通用します」


「まぁ通用するだろうな」


 日本の食品衛生は基準が高いらしいし。


「なので、カズキさんには大量の食料品を提供していただきたいのです」


「分かった。それで、何が居るんだ?米、麦、魚、肉、野菜、果物、とにかくなんでもあるぜ」


「まずは穀物ですね。保存ができるからと、真っ先に買い占められています。特に麦はかなり品薄でして、魔獣騒動と収穫時期が近い事も災いして収穫量は例年より少なくなりますし、昨年の備蓄がそろそろ怪しくなっていた所なんです」


「そういや、魔族討伐で第一王子とか第二王子が軍を編成してたって言ってたけど、兵糧とかどうなってんの?」


「確かにその件もあります。並の貴族が相手であれば買い占めを断ることもできますが、兵糧の買い付けとなれば話は別です。それ相応の対価を貰い、あちらには大義がある。それを断ればオルコット商会は王族への反抗とみなされかねません」


「なるほどね」


 現代ではあまり考えなかったけど、西欧の中世時代とかで普通にありそうな話のような気もする。


「話は分かった。それじゃあ、俺が食糧の手配はするよ」


 コストパフォーマンスでお馴染みのコストパさんにお世話になるだろう。どこよりも安く、お値段以上。欲張りなキャッチフレーズだが、今回はありがたい。


「そうだ。穀類って言ったけど、米でもいいのか?」


「米ですか? 悪くはありませんが、どうして米なのでしょう?」


「俺の国は米の国って言われるぐらい、米が大量に出回ってるからな。安定して大量に手に入れようと思ったら米の方がいい」


「そうですね。今は選り好みできませんから、カズキさんが言うように米でお願いします」


「分かった」


「それで、お米はどれぐらいの価格でお引き取りしましょうか?」


「そうだな……」


 俺は頭の中で計算を始めた。手元の資金が60万有り、それを全部米に変えたとする。米が10キロ2000円として概算すると凡そ3トンの米が買えることになる。
 3トン!?
 自分の脳内で計算して自分で驚いてしまった。いや、俺一人じゃ運べない。
 いや、そこはひとまず置いておこう。


「米10キロで銀貨4枚でどうだ?」


「そうですね。それぐらいならば今の食料品高騰を止める事ができるかもしれません」


「ちなみに米3トンって言えば、どれぐらいの人間の食事を賄えるんだ?」


「概算ですが、5千人が一日をお腹いっぱいに過ごせる量ですね。もう少し言えば、1万人が1日飢えずに済みます」


 1万人が飢えずに済むか。やる気を出すには十分だな。


「セシル、筋力増強の魔宝石とかないか?」


「ありますよ。比較的良く出回っている魔宝石ですね」


「とりあえず、それを準備して欲しい」


「準備ですか?」


「ああ。俺の国で俺が使える金を全て米に替えた場合、約三トンの量になる。それを運ぶために必要なんだ」


「分かりました。こちらで用意させていただきます」


「後で買い取らせてもらう」


「いえ、こうやって相談に乗っていただきましたので、無事に食糧の調達ができた場合はこれから用意する魔宝石は差し上げますよ」


「そうか。悪いな」


 セシルは商談室を一度出る。どうやら俺の注文を本当に聞いてくれるようだ。
 とにかく米の調達が第一だ。10キロの米袋が300個だ。俺から困りごとは無いかと聞き、食料の調達という依頼を受けた。
 なら、完遂しなきゃな。
 

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