異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第83節

 現代に戻ると、普段とは何かが違う事に気が付いた。
 体が異様に重い。立っていられず、そのまま床にへばりついてしまうほどに。
 それも体がキツくて重いといった比喩表現ではなく文字通り重い。
 自分の身に何が起きたのかさっぱり分からなかった。体が動かなくとも、頭は動く。冷静に考え、体が重くなった原因を探る。
 病気ではないはずだ。明らかに突発的な現象。きっかけは異世界から現代に戻ってきたこと。しかし、今までこんなことは起こらなかった。ならば、何かが決定的に違うはずだ。
 そう考えると一つだけ、いつもと違う点があった。
 魔力の代替物になる魔石を持ち帰ったことだ。
 俺は這いながら、魔石を放り出す。といっても、指先で弾く程度しかできないが。
 全て出し終えた俺は体が軽くなったことに安堵した。
 魔力と超重力、つまりは魔石によって荷重のベルトが力を発揮したという事だ。


 これは使える。
 魔石さえあれば、現代でも魔法が使える。俺自身に魔力がなくとも魔石があれば、魔宝石の効果は発揮できる。
 俺は興奮が止まらなくなってきた。
 必ず、現代で役立つ魔宝石を手に入れる。必ずだ。


 現代装備に着替え、質屋に向かう。あまり頻繁に質屋に訪れ、顔を覚えられるのも嫌なので今回は少し遠い場所にある質屋に向かう事にした。一度行けば、某竜の御使いの便利魔法の如く擬似瞬間移動もできる。
 各駅停車を経由して、快速に乗り継ぎ、揺られること一時間弱。県内で最も栄えているH市にやってきた。ここならば俺の顔を知ってる人間はまずいないだろう。
 早速、目的の質屋に向かい、個人的に気に入った魔石の指輪を除いて全ての宝石を買い取ってもらう。数が数なだけに時間を要するようで、翌日までかかると言われた。まぁそうだよな。あのおっさん、一つの魔石から数個ぐらいの指輪を作り出した。それでもなお、一つ一つの魔石がでかい。きっと良い値がつくはずだ。
 さてと、空いた時間をどう潰すか。
 帰ろうと思えばいつでも帰れるし、少し遊んでいくか。
 そういや、アイリスにお菓子を買う約束をしていた。買う買わないは別にして、少しお菓子を見て回ろう。
 俺は街を散策していると、一件の洋菓子店を見つけた。俺と同じで夏休みを満喫しているであろう女子大生や少し気品のいいおばちゃんが店内でケーキを食べている。
 店内に入るとゆったりとした曲が流れており、ショーウィンドウには数多くのケーキ類が並べられている。
 俺はオーソドックスにショートケーキを一つ注文し、目立たない席に座りためしに食べてみる。
 お、美味いな。
 普段食べる生クリームとは違う。たぶん、植物性ではなくて動物性の生クリームだろう。まろやかな味わいがあり、妙な後味がない。もし、あの魔石が高値で売れればこれを買ってやらんこともない。

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