異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第80節

 新たな商品を調達した俺は奴隷3人+メイド2人を荷物持ちとして連れ、大量の食料品をオルコット商会に卸す。
 今回の一番の目玉は格安の鶏胸肉。30円/100gと費用対栄養が良い肉。栄養価があり、食材が高騰気味なサニングには良いだろうと思ったからだ。
 これはセシルから喜ばれた。最近の魔獣騒動で少なくない数の家畜が被害を受け、肉類もやや値上がりし庶民が手を出しにくくなっているそうだ。そして、俺が思った以上にこの世界は食料品の物価が高い。今まであまり気にしてこなかったが、普通の食事を一食作ろうと思ったら食材だけで銀貨1枚は超える。強引円換算で2000円になり、確かに食料品が高騰しているようにも思える。
 食料品ならわざわざ鑑定して貰わずとも良いと思い、俺とセシル間で価格を決めた。初めはクリスティーナとの件もあり、一応は食料品高騰の歯止めに貢献してもいいなと思い少しの赤字は覚悟で持ち込んでみたが、多少の黒字は期待できそうだ。
 オルコット商会から帰ろうと思った矢先、ロージーが馬車の手配がどうなっているか店に尋ねるといい、俺も少し気になったため同行することにした。
 向かってみると、既に馬車は用意されており、馬の手配も出来ていたとのこと。
 立派な黒い毛並みを持つ二頭の牡馬。競馬で見るような細い体ではなく、図体がしっかりした筋肉質の馬だ。
 馬車は非常に大きく、物をたくさん積めそうだ。早速、馬と馬車を受け取り俺達は馬車に乗り込んだ。御者はロージーにしてもらい、隣にはハリソンが座る。俺とアイリス、ジェイドとアンバーが荷台だ。幌馬車のため、日除けにもなり乗り心地を無視すれば快適だ。


「ロージー、良い買い物だったな」


 俺は御者台にいるロージーに声をかけた。


「そう言ってもらえて良かったですわ」


 俺はリュックからボールペンとA5とA4サイズのノートを一冊ずつロージーに渡そうとして、ハリソンが受け取った。


「昨日話した筆記具。色々と頑張ってくれたみたいだから、小さいノートは俺からの気持ち」


「ありがとうございます」


 俺とロージーのやり取りを見ていたジェイドが倒れないように四つん這いになったままこちらにやってきた。


「今のはなんですか?」


 ジェイドが訊いてきた。


「筆記具だよ。ペンの中にインクを入れて、中が空になるまで文字がかける便利な道具。こっちだと羽ペンにインク壷が必要だろうけど、いまロージーに渡したボールペンなら持ち運びも楽だし、メモも取れる」


「ご主人様は変わってますね? 奴隷に物を与えるだなんて」


「……ジェイド、口を慎みなさい」


 アンバーがジェイドのスカートの裾を引き寄せ、ぺたりと座らせる。


「ご主人様に変わっているなんて言ってはダメよ」


 そういう姉らしい事もするんだな。


「思っていても口に出してはダメよ」


 ああ、アンバーもそう思っていたわけね。


「俺は気分次第で奴隷でも物は与えるし、仕事上必要な物は買い与えるつもりだ。例えば、こういう物」


 俺はポケットから飴玉の袋を取り出して破って、ジェイドとアンバーに一つずつ渡す。


「これは?」


「まぁ俺の国のお菓子だよ。……そういえば、昨日は俺の手を治療してもらったし、アイリスにも一つやろうか」


「ありがとうございます」


 あんまり治った気はしないけど、柔らかいアイリスの手を握っていたら多少は気が紛れたしな。
 アイリスは嬉しそうに飴玉を頬張って口の中でコロコロ転がしているようだ。
 その様子を見たジェイドとアンバーも同じように口の中に飴玉を入れる。すると、ジェイドはハッキリと、アンバーは僅かに表情を柔らかくした。


「凄く甘いです!」


 今にも飴玉を吐き出しそうな勢いで甘い甘いと連呼するジェイド。アンバーは黙々と口の中で飴玉を転がしているようだ。


「まぁこれが俺の方針。二人も仕事を頑張ったらお菓子をやるから、頑張ってくれよ」


「お姉ちゃん! 頑張ろう!」


「そ、そうね……」


 アンバーの方は表情が徐々に険しくなっている。飴玉を舐め始めた最初は少しは破顔したように見えたが、何やら難しそうな表情を浮かべている。


「カズキ様、宿につきました」


「ああ、今降りる」


 俺は双子との話を切り、下車した。

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