異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第78節

 本来の目的である会食から趣旨は外れ、俺がクリスティーナの親衛隊に入る云々の話になってしまったが、結果的にはそう悪い状態ではない。
 俺はクリスティーナと繋がりができ、ほぼ義務なく親衛隊に入ることができ、この国の国民権を得て家を持つこともでき、功績次第ではこの国では珍しい土地持ちになれるようでもある。
 それと預かったこの双子。見た目は愛らしく、言う事も聞く。あまり比べるのは良くないが、アイリスよりも手際が良い。まぁアイリスは元貴族のご令嬢、家事雑事は生来やってこなかっただろう。


 俺たちは宿に戻り、新たに双子の部屋を用意した。


「私達は二等でいいわ」


 と、アンバーの方がさらっと言ったため、二等客室の二人部屋を用意してもらった形だ。
 俺には既にアイリスがおり、別に新しいメイドも欲しいとは思わなかったため、双子はハリソンとロージー付きにしている。ジェイドとアンバーはそれがご主人様の命令ならばと特に不満を言う事もなく従った。既に二人は俺がご主人様と受け入れているらしい。


「ハリソン。少しいいか」


「はい、カズキ様」


 俺はハリソン達の部屋に訪れ、ハリソンを呼び出した。一応、アイリスは部屋に置いてきている。


「さっきの件だけど、話してもらえるか?」


「分かりました」


 ハリソンはロージーに少し出てくると伝え、俺達は宿を出た。男二人で星空の下、冷風吹く中で立ち話もなんだと思い、近くの酒場に移動した。
 俺達は隅の二人掛けの席に座り、注文はハリソンに任せた。


「それで、あの双子を預かると俺が姫様を信用できるってどういうカラクリなんだ?」


「それを説明するにはまず、魔族の話をしなければなりません」


 また魔族か。


「聞こうか」


「まず、魔族を見分ける方法ですが一般的に言えば即座に見分ける方法はありません」


「ああ。それは知ってる」


 俺は相槌を打った。


「しかし、長期的に見れば見分ける方法があります」


「長期的にか」


「魔族は人族のように子供を産みません。男ならば種を与え女を孕ませることができれば、女ならば男から種を受け孕めば人族だと見分けられます」


「ああ、なるほど」


 確かにそれなら見分けられる。確かに時間がかかるが、全く見分けられないわけでもないのか。で、それとあの双子がどう繋がる?


「そして、王族や貴族は信頼する部下を得るために自分の娘や、傍に仕えさせた大事な部下等を与えるのです。例えば、クリスティーナ王女がレオ様を信頼したいが、魔族かもしれないため本当に信じらず、不安だとします。そこで侍女のキムをレオ様と結婚させ、子供を産ませる。すると、レオは人族であると判明すると共に人族のため信用できる。という流れになります。これは昔から行われている習慣ですね。なので、大事にしている部下の数が多ければ多いほど、多くの信用できる部下を増やすことができます」


「その大事な部下にあの双子も含まれるのか」


「そうなります。王族の側仕えのメイドを預かるというのはそれなりに信用されている証拠にもなりますし、こちらも相手を信用するには十分な判断材料となります」


 なんというか、分かりにく話だ。よく聞く政略結婚に近い何かを感じてあまりいい気分じゃない。


「聞きにくいことを聞くけどいいか?」


「なんでしょうか?」


「……ヨハンに誰かをあてがおうとは思わなかったのか?」


「…………」


 俺の質問にヨハンは押し黙った。


「いや、いい。話したくないなら」


「……いえ……そうですね。別に隠すような話でもないですから」


 ハリソンは机の上で手を組み、その手をじっと見ながらゆっくりと話しだした。


「私は先ほど話した習慣はあまり好きではありませんでした。私はロージーを愛していましたし、ロージーも私の事を愛してくれました。その愛が他者によって阻害される事はとても嫌でした。それが実の父親でも。そして、私の部下にもそれぞれ、好意を寄せる人間がいることは知っていました。それを私の都合で誰かと誰かを命令で結ばせるのは間違いだと思っていました。そんなことをせずとも信頼できる部下を作れると、未熟な私はそう思っていました。……結果として、私は家族以外の全てを失いました」


「……昔に戻れるなら、ヨハンに誰かを嫁にやって魔族だと見破れたほうが思ったと思うか?」


「そうすればきっと、私は家族を失うことになったでしょう」


 つまり、そういうハリソンの優しい所がロージーは好きだったのか。


「そうか。ならいいんだ」


「はい」


 ハリソンはなんとも複雑な笑み表情を浮かべたが、すぐに表情はいつもの顔に戻る。


「あとカズキ様、これは私の考え過ぎかもしれませんが夜は一人にならない方が良いかと思います」


「ん? まぁ夜はアイリスが一緒だから一人ってのはありえないけど」


「…………」


 あ、ハリソンが凄く面白い顔をしている。


「とにかく、夜はあの双子に気をつけてください。もしかしたら、クリスティーナ王女はカズキ様が人族であるかどうかあの双子に確かめさせるつもりかもしれません」


「え、それってどういうことだよ」


「……言いにくい事ですが、カズキ様はクリスティーナ王女に幼女趣味であると思われている節があります」


「え!?」


 いや、それはないって。


「アイリスを引き取るために大金を僅か一日で用意したという事は既にクリスティーナ王女の耳に入っていることでしょう。とすれば、クリスティーナ王女はカズキ様が幼女趣味だと結論付け、わざわざ幼いあの双子をカズキ様の下に置くことで、その……そういうことがあれば人族だと判明するわけです」


「いや、でも……」


 確かあの二人は11歳だと言っていた。この世界の法がどうかは知らないし、この世界の女性がいくつから初潮を迎えるか知らないが、ありえない話ではない。
 なんという幼いハニートラップ。幼女恐怖症になるぞ。嘘だけど。


「私からの忠告は以上です。人族だと証明するため、あえてその誘いを受けるも良いですし、警戒して距離を置くのも良いかと思われます。ただ、カズキ様が望まれない形で子を成さないようご注意申し上げます」


「ああ、分かった」


 これはハリソンに借りができたな。今度、ハリソンが好きそうな酒を用意してやらないと。

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