異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第77節

 会場に戻ると数多くのメイドさんが立ち並んでいる。
 誰がそのメイドなのか、俺には判別がつかない。


「ジェイド、アンバー来なさい」


 呼ばれて出てきたのは並ぶメイドの中でもかなり小さい。背丈はアイリスと変わらない。
 しかも、この二人は見た目がそっくりだ。この世界では珍しく、水色の髪を肩まで下げている。
 唯一の違いはその瞳の色、どっちがどっちか区別はつかないが、片方は薄い緑色、片方は薄い赤褐色だ。


「この子達はキムが孤児院から引き取って育てた子達なの」


「孤児院?」


「そうなの。戦争で親を失った子供や捨てられた子供を育てる場所。カズキの国には無いかしら?」


「まぁあるけど」


 育児放棄された子供とかね。
 それはいいとして。


「この二人はタイン人か?」


「いいえ。アベル人の子供よ。相応の魔力を持っていて、普通に成長しているわ」


 マジか。


「髪の色が薄いけど、トール人の血を引いてるってわけでもないのか?」


「あら、カズキは血統を気にするの?」


「そういうわけじゃないけど、俺の知ってる知識だとそう感じたから確認しただけ」


「もしかしたら、トール人の血を引いてるのかもしれないわね。でも、ごめんなさい。実際の所は私には分からないの」


「ふーん。まぁいいか」


 俺はジェイドとアンバーと呼ばれている少女を見比べる。やはり、そっくりだ。呼吸のタイミングまでシンクロしてやがる。


「どっちがジェイドでどっちがアンバーなんだ?」


 俺は双子に尋ねてみる。


「私がジェイド!」


「……私がアンバー」


 もうこの時点で双子の性格はハッキリと違うことが分かる。ジェイドが活発、アンバーが冷静。よくよく見ると、ジェイドは口角が上がっており、アンバーは口角が下がっている。


「年は幾つ?」


「10歳」


「お姉ちゃん、この間11歳になったでしょ?」


「そうだったかしら」


 一応、冷静なアンバーが姉で元気なジェイドが妹のようだ。ついでに言えば、アンバーは抜けている所もあるみたいだ。


「この子達をカズキ、あなたに預けるわ。身の回りの世話をさせてもいいし、私達とのやり取りのための遣いにしてもいいわ」


「身の回りの世話なら、もうコイツがいる」


 俺の手を握り、治療に専念するアイリスの頭の上に手を乗せる。


「それでも、人手が多いに越したことはないんじゃないの? 商品の運搬で頻繁に商店を出入りいたようだけれど」


 そんな情報まで持っているのか。ああ、そういやハリソンが親衛隊を見かけたって言ってたか。


「それも解決する予定。こっちの奴隷が馬車の手配を済ませたからな」


 俺はロージーを指差す。


「あら、そうだったの」


「ああ」


 どうせ、俺の傍に置くことで俺から情報を抜き取ろうって魂胆なんだろう。俺の能力については、あっちとこっちの世界を合わせてアイリスしか知らない。そのアイリスも従者の契約によって決して口外しない。せっかくここまで秘密を保ってきて、今更明かすわけにも行かない。


「それに、なんでこの二人を預けたいんだ?」


「そうね。その理由は三つあるわ。一つはカズキの傍に二人を置くことで、私達の知らない見識を得て欲しい。もう一つはこの城に自由に出入り出来る人間がカズキに必要だと思ったからよ。そして最後、この二人を預けることで私達を信用して欲しいの」


「この二人はそんなに大事な存在なのか?」


「カズキ様、その話をこの場でするのは少し控えた方がよろしいかと」


 珍しくハリソンが口を挟んだ。どうもハリソンは何かを察したらしい。


「後で説明してくれるんだろうな?」


「はい」


「確認するけど、この二人を預かることはこのお姫様や、この白騎士様を信用するに値するってことでいいんだよな?」


「はい。それは間違いないです」


 元貴族のハリソンの言う事。俺の知らない確証を持っているようだ。


「分かった。その条件は飲もう」


「ありがとう。カズキ」

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