異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第74節

 俺はメイスを構えなおす。なんというか、テンションが上がってきて体も軽い。


「いくぜ、レオ」


 俺はメイスを片手にレオに駆け寄り、メイスを振るう。さっきの一撃とは違い、連撃でレオに詰め寄る。レオは全部を全部受け流すことはなく、半分以上を見切って交わしていた。時折混ぜる左手による掴みや足蹴りも簡単にいなされる。
 やはり、レオは強い。当たり前だが俺よりもずっと強い。
 既に俺は肩で息をしているのにレオは息を乱していない。単純に俺の運動量が多く、俺のスタミナが少ないだけの話だ。
 それでも俺は攻撃の手を緩めず、ひたすら連撃を繰り出す。しかし、俺の攻撃は全てレオに直撃することなく、空振ったり、石畳を割ったり、庭木を吹き飛ばすことしかできなかった。


「チッ……」


 いつの間にかできた手のマメが潰れたみたいだ。ズキズキと疼き痛む。


「カンザキさん、大丈夫ですか?」


 俺の不調にも敏感に気がつくレオ。


「ああ、大丈夫さ」


 俺は構わずメイスを振り続ける。俺の猛攻のせいか、レオは身を躱す頻度が下がり、代わりに受け流すことが多くなってきた。足取りも初めの時と比べると鈍い。しかし息は乱していない。
 俺は猛攻の勢いを少しだけ弱め、周囲に注意を払う。すると、今までレオしか見えていなかったが、周囲の環境が悲惨なことになっていた事に気がついた。石畳は砕け、庭木は無残に散り、嵐の後のようにあらゆるものが散っていた。そのせいか、足場も不安定になっており石畳の欠片、といっても握り拳ぐらいの物がそこらじゅうにゴロゴロと転がっている。
 そのせいか、レオの足運びもステップを踏むような軽い足取りからいつの間にか滑るような摺り足に代わっている。
 俺のスタミナも底が見え始めてきた。
 新しい商品のつもりだったけど、しょうがない。
 俺はポケットから百円ライターを取り出し、レオに向かって投げる。それと同時に俺はレオに詰め寄る。
 レオは俺の放ったライターを剣で迎撃し、予想以上に大きい破裂音がする。


「うりゃあ!」


 俺は詰め寄る速度そのままに勝ち上げる一撃をレオに叩き込む。レオはその体勢から受け流すことはできず、咄嗟に防いだ刀身で俺の一撃をまともに受けた。
 その瞬間、レオの足は地を離れ後ろに吹き飛んだ。しかし、レオは最後まで笑を絶やさなかった。


「参りました。私の負けです」


 俺が降参宣言をする前にレオが先に降参した。


「これでは戦えません」


 そう嘯くレオは刀身がひん曲がった剣を俺に見せてくる。


「言ってませんでしたが、模擬戦では武器破壊による勝利もあります」


 本当か嘘か、俺に確かめる術はない。ただ、レオが敗北宣言をし、俺は模擬戦に勝った事になる。なんとも釈然としない。
 ただ、勝ちは勝ちだ。

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