異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第73節

 俺はレオの部下であろう男から訓練用のメイスを受け取る。全長1メートル半程。俺の身長より少し短いぐらいか。手応え的には5キロ程度だから、実質15キロ程度の重量武器になるだろうか。


「どうですか? 重さの方は」


 レオが俺に尋ねてくる。
 俺は使い勝手を確かめるように適当に振り回してみる。軽いが動かしにくい。しかし、使えないほどでもない。


「……凄いですね。魔石の力無しに片手でそこまで操れるとは」


 そんなつもりはないんだけどな。


「模擬戦はどこで行うんでしょうか?」


「親衛隊の訓練場でしましょう。既に人払いはさせてますので、人目を気にせずにできますよ」


 クリスティーナ王女が見てる前で人目を気にせずと良くもまぁ言えたものだ。


「はい。お手柔らかに頼みます」


 俺達は本来の目的である会食を切り上げ、模擬試合を行う運びとなった。俺の奴隷達も呼び寄せた。
 訓練場は王城の裏手にあり、石畳が敷かれ、庭木が剪定され、訓練場というよりも庭園のような趣だ。


「勝負の前にルールを決めましょうか。私は魔宝石、魔法無し、剣のみで相手をさせてもらいます」


 ――なんというか、丁寧な口調で手加減しますよと言われたようで癪に触るな。


「ああ、こっちは自由にやらせてもらう」


 おっと、地が出てきた。まぁいいか。自由にといっても、武器になるのはこのメイスぐらいだけど。


「相手を降参させるか、立ち上がれなくした方が勝ち。これは親衛隊で行われる模擬戦と同じルールですが、よろしいでしょうか」


「ああ」


 俺とレオは互に距離を取りながら、得物を確かめる。
 このメイスなら剣を叩きおることだって可能だろう。レオだってそれは分かってる。受け流しからのカウンターか、速攻の一撃か。


「では、始めましょうか」


 レオは構えてみせる。受けのようだ。こちらから攻めてこい、いや、本当の意味で実力を見せてみろってことか。
 俺は技術もへったくれもない構えで、メイスを大振りで振り下ろしながら襲いかかる。
 レオは半身になり、右手で両刃のショートソードを構える。
 俺はメイスを振り下ろしきる直前、レオは一歩踏み込み、俺のメイスを綺麗に受け流した。そして俺のメイスは勢いそのままに石畳を真っ二つに割った。


 俺は不安定な態勢のままレオの間合いに入る形になった。目の前には剥き出しの刀身。俺は反撃を警戒、いや、恐れてメイスを手放し後退した。


「カンザキ様、どうかしましたか?」


 俺の攻撃等どこ吹く風といった様子でレオは構え、そのセリフが煽り文句に聞こえるのは俺の性格が曲がっているからだろうか。
 どうぞ、メイスを取ってくださいと余裕の様子。
 俺は黙ってメイスを拾った。バカ正直な一撃じゃ決まらないことは分かっていた。しかし、石畳を真っ二つに割った程度じゃレオは驚きもしない。
 どうも、レオの方は様子見のつもりか積極的に仕掛けてこないつもりのようだ。それなら、こっちは攻撃に全意識を傾けられる。
 俺はメイスを両手持ちに替え、全力でレオを叩き潰しに行く。
 俺とレオの実力ははっきりとしている。戦場の騎士と机上の学生とじゃそもそも土俵が違う。


「アイリス」


 俺はスーツの上着とシャツを脱ぎ、ついでにベルトも外し、アイリスに手渡す。


「カズキ様、頑張ってください!」


「まぁ死なない程度に頑張るさ」

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