異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第72節

「クリスティーナ様」


 たぶん、彼がレオ・ルーカスその人だろう。副隊長という役職柄、それなりに年を経た人物だと思ったが、俺とあまり変わらないように見える。ただ、俺と違って非常に凛々しい出で立ちだ。


「レオ、来てくれたのね」


「はい。クリスティーナ様がお呼びと伺いましたので」


 男の勘だが、このレオという男。クリスティーナに惚れている気がする。


「あなたをカズキに紹介したかったの。カズキ、彼が私の親衛隊副隊長のレオ・ルーカス。仲良くしてね」


「ご紹介にあずかりました。私がクリスティーナ様親衛隊副隊長のレオ・ルーカスです」


 丁寧な物腰で自己紹介をするレオ。なんというか、親衛隊というワードが旧時代のアイドルオタクを彷彿とさせるが、本当の意味での親衛隊というのはどういうものなんだろうか。


「初めまして、私はカンザキ・カズキ。……異国の行商人です」


 適当に肩書きを付けてみた。


「あなたが噂のカンザキ・カズキ様ですか」


 レオは興味深そうに俺を見る。


「どんな噂を聞いたのでしょうか?」


「珍品を持ち込む異国の青年。街でも一部では噂になっていますよ。見たこともない衣服を身にまとった青年が奴隷を連れてオルコット商会を出入りしてると」


 噂が立つのが早すぎないか。


「それなら、間違いなく私でしょう」


「昨日、私もオルコット商会に立ち入る用件がありまして。そこでカンザキ様が取り扱っている商品を見て、早速いくつか我が隊のためにと購入させていただきました」


 ペットボトルのことだろう。


「それはありがとうございます」


 俺が礼を述べると、クリスティーナが口を開いた。


「さきほど、カズキさんのお話を聞いていたの。鉄の棒一本で魔獣達を追い払い、村を守った話なの」


「魔獣をですか……。カズキさんは何か武芸を嗜んでいたのですか?」


「いや、何もしてませんよ」


「それでは魔法を操れるのですか?」


「魔法の適正は全然ありませんよ」


 俺は笑って答えた。


「それではどうやって魔獣を? 本当に鉄の棒だけで追い払ったのですか?」


「私が使ったのは単なる火掻き棒で、一回ふるった程度で曲がってしまったので捨てましたね。あとは手足に噛みつかれたので、そのまま腕や足を振って壁に打ち付けて倒しましたよ」


 嘘は言っていない。というか、それが全部だ。


「魔獣に手足を?」


 俺の言葉にクリスティーナが反応する。


「まぁ怪我らしい怪我もしませんでした。強いて挙げればちょっと内出血した程度ですかね」


「その頑強さは並のシーク人以上ですね」


 そう評価するのはレオだ。
 シーク人と言えば、噂に聞く身体能力に秀でた種族だったか。


「カンザキ様、私と一勝負していただけないでしょうか?」


 この騎士様、とんでもないことを言いやがる。


「どうやって?」


「私の隊の訓練用の武器がありますから、そちらをご用意します」


 ああ、そういや王城に入るときに渡したっけか。親衛隊の副隊長様はそんなことまで把握しているのか。
 ……。


「私は訓練用のショートソードを使います。軽剣、重剣、槍、斧、主要な武器は揃えていますよ」


 と言われても、どんな武器が俺に向いているかわからない。とりあえず、今の俺は怪力ということらしいから、重めの武器を用意してもらおうか。


「とにかく重たい武器をお願いします」


「重たい武器ですか……」


「あ、できれば刃物以外で」


 素人が長物を使うと自分すら切りかねないと聞いたことがあった。


「では、メイスかハンマーですね。お好みはありますか?」


「じゃあ、メイスで」


「分かりました。訓練用のメイスは殺傷しないよう刺が除かれていますが、よろしいですか?」


「はい」

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