異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第71節

「カズキさんはとても強いのですね」


 クリスティーナはキラキラした目で俺を見ている。


「あんまり自覚はないんですけどね」


 生まれてこの方、喧嘩で強いと言われたことはない。こっちの世界でこそ偶然で魔獣を追い払えたが、その理由は俺が強いわけではなく、この世界が現代に比べ重力が軽いため相対的に俺の力が常人よりも強く見えるだけなのだ。そのことを自覚しているだけになんとも居心地が悪い。


「私の親衛隊も強い方がいらっしゃいますの。……そうね。折角だから紹介しましょう。少し待ってちょうだい」


 クリスティーナはメイドの一人を呼び寄せ、遣いに出したようだ。


「その方はどういった方なんでしょうか?」


「私の親衛隊副隊長のレオ・ルーカス。剣術と魔術の両方に秀でたとても真面目な騎士なの」


 剣術と魔術の騎士か。さしずめ、ゲームのジョブで言えば魔法剣士みたいなものか。


「親衛隊ってどういうものなんだ?」


 これはクリスではなくセシルに尋ねる。


「親衛隊は王族を守る騎士の集団ですよ。クリスティーナ王女の親衛隊は百人規模の私兵になりますね。親衛隊は精鋭から成り、その副隊長ともなればその実力は本物でしょう」


 エリート中のエリートって訳か。


「セシルの言うとおり、レオはとても優秀な騎士です。私の親衛隊には勿体無い程」


 そのレオという人物を誇りつつも自虐的なクリス。あんまり自分に自信が無いタイプなんだろうか。


「そのレオさんはどれぐらい強いのでしょうか?」


「私もレオに同じような質問をしました。その時、彼は『魔人二体を相手にして無傷で勝てる程度』と言っていました」


 いまいちピンとこないが、かなり強そうだ。


「カズキさんに分かりやすくいえば、魔獣二百体を無傷で倒すようなものでしょうか」


 ああ、それができる奴は人間じゃないな。竜神の末裔とか元ソルジャーでもなけりゃ、無理だ。
 あの時、五体程度に囲まれて手足に噛み付かれた。それが二百体ともなればいくらこの世界で頑丈な俺でも無傷は絶対に無理だ。


「カズキはどうしてそんなに強くなったの?」


「別に強くなったわけじゃないですよ。ここでは私は強いと言われますが、私の国では決して強いと言われません。むしろ、弱いぐらいですから」


「そうなの? カズキの国は皆があなたより強いの?」


「まぁ同じ男で同じ年頃なら俺より強い奴はたくさんいますよ」


 実際、俺は喧嘩に強くなかったしな。


 そうこう話しているとクリスティーナが入ってきた扉からまた一人、白い衣装を身に纏った男がやってきた。

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