異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第69節

 セシルは俺の言葉に即座に応え、手土産を用意する。


「それはなんでしょうか?」


 クリスティーナは身を乗り出してセシルの手元に目を凝らす。


「私の国の商品です。きっとクリスティーナ様にも気に入っていただけると思いますよ」


 今回のメインは入浴セットのシャンプーとボディーソープだったが、クリスティーナの希望はどうも菓子類らしい。念のため買ってきておいてよかった。
 ともあれ、メインは入浴セットだ。
 俺はシャンプーのボトルを手に取り、やや演技口調で口上を述べる。


「これは入浴する際、髪を洗う薬剤です。汚れを落とすだけでなく、傷んだ髪を整える効果もあります」


「髪を整える?」


「はい。私の奴隷のアイリスもこの薬剤で奴隷生活中に傷んだ髪を綺麗な髪に整えることができました」


 嘘は言っていない。なんとこのシャンプー、面倒くさがりの俺向けのリンスインシャンプーだったりする。


「確かに、あの子の髪は奴隷にしては……いえ、並の貴族よりも整っていた気がするわ」


 その感想もどうかと思うが、クリスティーナは俺の言葉をある程度受け入れてくれるようだ。
 一応はロージーがアイリスの事を想って髪を梳いたりしていたからだと思いたい。


「こちらは体を洗うボディーソープというもの。汚れを落とし、肌に潤いを与える物です」


 俺はそう説明しながら、ボトルの口を開ける。


「この中身を嗅いで頂けますか?」


 俺はメイドに手渡す。メイドは初めに中身を嗅ぎ、驚いた後にクリスティーナの元へ運ぶ。


「甘い香りがします。まるでジャムのようですね……」


 こっちの世界の人間にはシャンプーがジャムに見えるのか。トロっとして甘い香りという共通点はあるかもしれないが……。


「あくまで薬剤なので食べないでくださいね」


 俺は苦笑しながら説明を続ける。


「そして、こちらがクリスティーナ様ご希望の私の国のお菓子です。こちらがビスケット、こちらがチョコレート、こちらがキャラメル。よければ、食後のデザートとして食べてください」


 これもメイドに手渡すと、メイドはそのまま部屋を退出していった。


「たぶん、毒見をするんでしょう。お気を悪くしないでください」


 セシルが小さく補足してくれた。


「お気遣いありがとうございます」


 クリスティーナは嬉しそうに微笑む。やぱり、こうしてみると年相応の女の子に見える。


「私も甘い物は好きですから、お気持ちは分かります」


 俺達は笑って食事を続けた。
 話題の中心は俺で、セシルは俺と出会ったときの事を話した。

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