異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第68節

 クリスティーナ王女。この世界でもあまり見受けられない俺と同じ黒髪。一体どんな手入れをすればこの世界でそこまで綺麗な髪を維持できるのかと驚くばかりだ。肌は白く、トール人の血を引いたアイリスにも負けないほどの白肌。背は俺より低く、小顔でやや面長、可愛いと綺麗という感想を同時に抱かせる美貌。そんな女性が優雅に歩きながら、にっこりと微笑みながら俺の所までやってくる。


「あなたがカンザキ・カズキですね」


 絹の手袋で俺の手を握る。滑らかな感触と暖かな温もりが俺の手に伝わってくる。


「あ……はい」


 高貴。万感の思いを込めた一言が頭に浮かび、想像だにしない相手に委縮する自分が滑稽に思えた。


「セシル、あなたもありがとう。私のワガママを聴いてくれて」


 クリスティーナはまるで旧知の仲のようにセシルに接した。


「クリスティーナ様たっての希望とあれば叶えない訳にはまいりません」


 セシルもその対応に慣れている様子だ。


「今日は御馳走を用意してもらったの。二人共、楽しんでくれると嬉しいわ」


 クリスティーナは無邪気に笑った。
 俺のクリスティーナへの第一印象は儚げで柔和なお嬢様かと思ったが、内面は無邪気な少年っぽさが残っていた。
 自分も楽しみたい、相手にも楽しんでほしい。そんな純粋な想いがなんとなくだが伝わってくる。


「それと、カズキは奴隷をとても大切にしてると聞いたわ。同じ部屋で同じ食事は食べられないけれど、別室できちんと料理は用意してあるの。キム、案内してあげて」


「畏まりました。お嬢様」


 キムはそう応えて俺の奴隷三人を別室へ連れようとした。その際、ハリソンとロージーはその案内に従おうとしたが、アイリスだけは俺の応えを待った。


「いいよ。行っておいで」


 俺が一言声をかけると、アイリスは黙ったまま頭を下げ、キムについていった。


「さぁ、私達も食事にしましょう」


 クリスティーナがそう言うと、メイド達が一斉に動き出す。あるものは料理を運び入れ、あるものはグラスに酒を注ぎ、あるものは料理を並べる。
 どうやらコース料理のように順番に料理が運ばれてくるスタイルのようだ。広いテーブルにちんまりと皿が並ぶ。


「さぁ食べてください」


 食べろと言われて食べないわけにもいかず、俺は料理に手を付けた。。
 万が一、毒が入っていた場合は真っ先に現代に帰るつもりだ。その下準備も一応はしてある。
 初めの料理はスープだ。イメージとしてはすまし汁に近く、澄んだスープに一口サイズの肉や野菜が少しずつ入っている。


「お、これは……」


「気づかれましたか?」


 この世界では珍しく出汁を取っており、風味が良い。そしてなにより、胡椒が効いている。


「これ、胡椒がかかってますね」


「ええ、セシルが面白い物と言って色々と見せてくれたの。それがあなたの持ってきた商品だって聞いてね、あなたに会ってみたくなったの」


「それは光栄です」


「私の親衛隊の皆もぺっとぼとる? という商品を非常に気に入っていたようです。軽くて丈夫で破れにくいと評判なんですよ」


「クリスティーナ様の親衛隊の皆さんに気に入って頂けて私もセシルと取引した甲斐がありました」


 俺は笑いながらスープに更に口を付ける。


「お兄様も胡椒をとても気に入っていましたし、お父様も胃薬を気に入っていました。私も恥ずかしながら、ちょこれーとをとても気に入りました」


 少し照れながら笑うクリスティーナは俺が言うのもなんだが、年頃の娘と大差ないように見える。


「そんなに気に入っていただけましたか?」


「ええ。あのような甘く美味しいものはめったに食べられません! ……ですから、よければ……その……」


 ああ、そういうこと。


「セシル、少し早いけど」


「分かりました」

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