異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第67節

「ようこそ、おいでくださいました」


 初老の執事は丁寧に腰を折り、メイドさんも同時に腰を折った。
 まるで面接練習をしている就活生のような丁寧さだが、慣れた仕草で不自然さが全くない。この城内ではごく普通のことのようだ。


「オルコット商会のセシル・オルコットです。本日はお招きいただきありがとうございました。こちらはカンザキ・カズキ。クリスティーナ王女様の要望でご足労頂きました」


「私は執事のケネスと申します。こちらは侍女のキム。お話は伺っております。キム、案内して差し上げなさい」


「かしこまりました」


 この国では比較的多い茶髪の女性。二十代後半ぐらいだろうか。侍女って話だけど、メイドと何が違うのか俺には詳しくは分からないが、普通のメイドに比べると地位は高そうだ。
 キムと紹介された女性は俺達を連れ、城内を案内する。
 部屋数は多く、廊下に面した扉は数多くあった。中でも両開きの鉄門扉が鎖でがんじがらめにされ、ゴツイ南京錠のようなものをしている。歩きながら目を凝らしてみると、門扉の表面には黒ずんだ魔石のようなものが無数に埋め込まれている。奇妙だとは思いつつも、宝物庫か何かだろうとあたりをつけた。
 一分ほど廊下を歩くと突き当たりに大きめの扉が開かれたままになっており、俺たちはキムさんにその部屋へ案内された。
 室内は清潔感に溢れ、床は磨かれた石材でツルツルになっている。今日の俺はスーツに黒皮靴で尚更滑りやすい。
 うわ、シャンデリアがある。しかも、たくさんのロウソクが並び立てられていて部屋がこの世界では見たことがないぐらい照らされている。正直、眩しい。というか、凄く勿体無い使い方だと思ってしまうのは貧乏性だからだろうか。
 テーブルは漫画みたいに細長いものではなく、畳を横に四つ並べたぐらいの大きなテーブルだ。その上にロウソクが立てられており、食器の類も並べられている。
 俺とセシルは促されるまま席に座り、アイリス、ハリソン、ロージーは当然のように壁際で待機し始めた。あたかも、奴隷は主と同じ席では座れないという暗黙の了解があるように。


「間も無くお嬢様がいらっしゃいますので、しばしお待ちください」


 キムはそう言った後、壁際で待機する。


「なんか妙な感覚だな」


 この場には俺とセシル、三人の奴隷、キムを筆頭としたメイドが数名いる。しかし、誰も口を開かないため静かな空気が漂っている。


「そうですね。私も商売柄、時折お邪魔することはありますが、ここまで歓待を受けた事は何度もないです」


「そういえば、さっき案内される途中でやけに頑丈に施錠された扉があったんだけど、なんだろう」


「確かに、お城で使われている扉はどれも一級品ばかりですね。最高品質の材料から造られたのは間違いないでしょう」


 俺が見たのは鉄門扉だったんだけどな。まぁいいか。
 そんな雑談をしていると、俺たちが入った扉とはまた別の扉が開き、メイドが保持している。
 そこからは美しい黒髪を持つ美少女が現れた。

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