異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第66節

 陽が傾き始めた頃、セシルが俺たちを呼びに来た。
 用意された馬車は二台で絢爛豪華な四人乗り。二人掛けの席が向かい合っている。


「カズキさん達はこちらにお乗りください。私はあちらの馬車に乗ります」


「分かった。じゃあ、城で」


「はい」


 俺が乗り込み、続いてハリソン、ロージー、最後にアイリスが俺の隣に座る。革張りの椅子で羽毛か何か入っているのか柔らかい座り心地だ。
 間も無く馬車は動き始める。ガタガタと振動が尻に響く。
 石造りの比較的整えられた路面でそれなりに乗り心地を良くする工夫はなされているが、やはり現代社会に慣れている俺にとっては乗り心地はイマイチだ。


「カズキ様、どうかなさいましたか?」


「いや……なんでもない」


 出発して数分で酔ったとは言いにくい。これから夕食だというのに、食欲は現在進行形で減退している。
 確か、唾を出せば酔がおさまる話を聞いたことがあるな。
 俺は気持ち悪さを紛らわせるため、飴玉を口に入れた。グレープ味だ。
 すると、アイリスが物欲しそうな目でこっちを見ていた。


「いるか?」


「はい!」


 俺はポケットから何個か取出し、ついでにとハリソンとロージーにも配った。やっぱり、甘い物には目がないらしい。
 車酔いを我慢しているうちに王城の城門へ差し掛かる。
 そこでは簡単な身分証明、俺の場合は国民ではないため、その身分はセシルに保証してもらう形となる。また、短剣の持ち込みは禁止のため向こうさんに預かってもらうことになった。
 まぁ最悪、そこらへんの備品を武器にすればいいんだろうけど。


 城門をくぐると当然の如く大きな城が一望できる。一キロメートル四方程の敷地にコの字型に作られた城構え。敷地の中心部には噴水がある。石造りの城だが、壁は綺麗に白く、二階建てで部分的に三階もあるようだ。そして、窓の間隔を見るに、一階一階が高い。


 馬車は城の入り口の前で止まり、御者が扉を開いた。
 下車すると、噴水で程よく空気が湿っており、清涼感がある。
 あたりを見渡すと、セシルがいた。既に城に着いており、俺を出迎えるつもりだったのだろう。


「雑事は私達に任せて、今日はクリスティーナ王女との会食を楽しんでください」


「ああ。まぁ俺の身の回りの世話はこいつらがいるからな。一応は元貴族だし、王女の前で粗相はないと思う」


「分かりました。では、早速中に入りましょうか」


 城の入り口は人間が横に十人並んでも入れるほどに大きな入口が開かれる。さすがにマンガのようにメイドが並んで出迎えるという歓待は受けなかったが、初老の執事と綺麗なメイドさんが出迎えてくれた。

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