異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第65節

 しばらくするとロージーが商談室にやってき、手短に商談内容を報告してきた。
 馬と馬車の手配は順調で安価に手配できたらしい。飼葉の手配や馬車の修理はその店で優先的に行う事を条件として安くしてくれたそうだ。それと、自分が奴隷であり、飼い主、この場合は俺がセシルと太いパイプを持ち、金持ちであることをアピールしたらしい。セシルとの繋がりがあれば商売上、後ろ盾にもなるとはロージーの談だ。
 まぁ安くて質が良い物が手に入るならば、文句はない。
 ロージー曰く、馬は二頭の青毛の牡馬。体力重視で長時間馬車の牽引ができるタイプ。馬車の方は本来の目的が商品の運搬であることから、シンデレラで登場するような客を乗せるような馬車ではなく、とにかく大量に物品を運搬ができるでかい幌馬車らしい。明日には用意でき、店頭で引渡しになる。ちなみに御者は俺以外の全員ができる。ハリソンやロージーはそれぞれの父親から教えてもらい、アイリスもまたハリソンから教わったようだ。貴族が自ら御者をするというのも不思議だが、貴族は馬を操れてなんぼという世界でもあるのかもしれない。
 ともあれ、俺としては人目が避けられる幌馬車はありがたいと思った。


「ロージー、何か欲しい物はあるか?」


 俺が求めた以上の成果を出したならば褒美を出す方針だ。


「欲しい物ですか?」


 俺が突然話を振ったせいか、ロージーはオウム返しに聞いてきた。


「ああ、商売上必要になるなら俺が用意する。まだ誰も持ってないような俺の国の物だって用意するぞ?」


 俺の提案にロージーは少しだけ考え込んだ。


「それならば、筆記具が欲しいです。カズキ様がアイリスに与えた筆があると助かります」


「ああ、なら明日用意しよう。線の太さとか、色とか本数とか希望はあるか?」


「線の太さまで選べるんですか?」


「0.3mm、0.5mm、0.7mmとある。ちなみに、アイリスが使ってるペンは0.5mmで一般的な奴だな。0.3mmはそれより細くて、0.7mmはそれより太い」


「では、アイリスと同じ物をお願いします」


「分かった」


 アイリスが持っているボールペンは黒、赤、青の三色のボールペンだ。容易に手に入る。


「ペンだけあっても仕方ないだろうから、何か書く紙を用意しようか。ノート……白紙の製本でいいか?」


「ッ……はい」


 ロージーはまるで驚き飽きたように頷いた。


「明日には用意するよ。馬車の手配、ご苦労さま」


 俺は届けられた鉄製の水差しをロージーに手渡す。


「ありがとうございます」


 ロージーはそれに口を付けて、ゆっくりと飲む。


「それじゃ、セシルが呼びに来るまでゆっくりとくつろごう」

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