異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第63節

 今日も今日とて準備を始める。シャンプー、ボディーソープの入浴セット。ついでにノートを一冊とA4サイズのコピー用紙を500枚セット。あと、セシルの情報ではクリスティーナは甘い物が好きだという話なので、ビスケット、チョコレート、キャラメル等を買い揃える。そして、何を思ったか1kgの砂糖を買ってみる。あの世界は甘い物が極端に少ない気がする。そもそも砂糖があまり出回っていないのかもしれない。ワインが酸っぱくて鉛の酒器を使って甘くするという話もあるぐらいだ。甘い物に飢えているんだろう。
 ……飢えているといえば、アヘン戦争のように相手に依存性のある物品を輸出して暴利を貪るという手法もある。例えば、タバコをあちらに持ち込み、王侯貴族をニコチン中毒者に仕立て上げ、タバコの値を吊り上げるという事ができない訳でもない。まぁそういうのは争いの元なのでしないけど。
 商品を精算するためレジに向かおうとすると食器のセールが行われていた。プラスチック製のお椀やステンレス製のスプーンやフォーク、ナイフ、彩色された箸等が安価に売られていた。


「……」


 俺はなんとなく、お椀とスプーン、フォークとナイフを三人分手にとって精算した。
 精算する際、ちらりとタバコが目に入る。


「……」


 俺が注目しているのはライターだ。レジを売っている店員にライターを注文してそれも精算する。
 不思議な事に向こうでは魔法があり、魔法が誰でも使えるにも関わらず、日常生活で魔法を使っている姿を見ない。なので、火をつけるだけでもちょっとした手間らしい。ならば、ライター一つで火が起こせる便利さは金になるのかもと買ってみた。
 それと、魔法が日常的に使われない理由をハリソンかアイリスあたりに聞く必要があるな。


 十分な物資を手に入れた俺は異世界に渡った。もちろん、スーツを着用している。ベルトはいつもどおり荷重のベルトを締め、似合わないピアスと首飾りをしている。ネクタイも締めようとしたが、首飾りが邪魔になったため、あきらめた。


 日は昇り、活気が徐々に増し始める頃。俺たちは四人で万屋猫目石で諸々の商品を鑑定してもらい、オルコット商会へ向かう。やはり黒スーツで身を固めた俺は異様に目立っていた。


「今日のカズキ様は凛々しいですね!」


 アイリスの褒め言葉も素直に受け入れられない。むしろ、皮肉を言われているように感じるのは俺が卑屈だからだろうか。


 自分のスーツ姿に悶々としながら歩き、オルコット商会に着く。


「カズキ様、荷馬車の手配の商談をするため席を外したいのですが、よろしいでしょうか?」


「ああ、いいよ。ハリソンが必要なら、連れてってもいいぞ」


「いえ、そこまでしていただかなくても問題ないです」


「そうか。まぁ馬車の件はロージーに任せるから」


「はい」


 オルコット商会に着き、俺たち三人とロージーに別れ、中に入る。


「ハリソン、ロージーが心配ならついて行ってもいいんだぞ?」


「その必要はありません」


 ハリソンは普通に言った。晴天の中、傘を断るぐらい簡単そうに。


「そうか」


 ハリソンが言うならそうなんだろう。

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く