異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第61節

 役所に向かい、役人から家の買い方を丁寧に教えてもらった。この国で家を買うにはいくつかの条件が必要らしい。まず一つは魔人でないことの証明。例えば、この国の住人との間に子供が生まれる事やこの国の人間との血縁証明がされること等。裏技として冒険者ギルド、そこで魔人討伐を一定数こなすことで信頼を得るという方法もある。俺の場合は前者が難しいので、必然的に後者となる。
 そして、この国では家を買うというよりも土地を借りてその上に自分の家を建てるというシステムらしい。あくまで土地は国のもので借地扱いらしい。なので借りた土地に相応するお金を支払えばいいらしい。
 まとめると、俺の場合はまず、信頼を勝ち得ること。そのために冒険者ギルドに所属する必要があるらしい。


「めんどうだな……」


「カズキ様、これからどうしますか?」


 アイリスが俺を見上げながら尋ねてくる。


「とりあえず、冒険者ギルドで登録とやらをした方がいいかもな。ただ、今日は疲れたしそういうのは明日にしよう」


 一息つき、そこで俺は空腹を感じた。そういえば、忙しさにかまけて飯を食べてなかった。


「よし。飯にするぞ」


「カズキ様、少しよろしいでしょうか?」


 ロージーが水を差してくる。


「どうした?」


「金貨三十枚をそのままお持ちになるより、馬車を購入なさってはいかがでしょうか? 商品の運搬にも使えますし、冒険者として馬車を所有しているともなれば箔も付きます。もし、カズキ様にそのつもりがあるのであれば、私が馬と馬車等の手配を致します」


「あー、そうだな。それがいいな」


 無いよりはあったほうがいい。この金もまだ使い道がない。強いて言えば魔宝石がもうちょっと欲しいかな。


「どれぐらいあればいい?」


「金貨4枚もあれば」


「内訳は?」


「馬に金貨一枚、馬車に二枚、厩を借りたり餌の手配などに一枚です」


 その言葉を聞いて、とりあえず納得した。


「一応、多めに五枚渡しておく。金は少し余裕があるから、価格より質を重視してくれ」


「畏まりました」


 俺は裸銭で金貨五枚をそのまま手渡す。ふと思ったが、ロージー自身の奴隷としての価値って今渡した額と同じなんだよな。


「カズキ様、少しよろしいですか?」


「今度はハリソンか。なんだ?」


「今日、オルコット紹介で取引をしていた際、セシル様がお客と取引をなさっていたんですが」


「まぁ商会で取引なんて普通じゃないか」


「その時のお客がこの国の貴族だったんです」


「ん? それってお前が金を借りたって話の?」


「いえ、そうではないのですが。その貴族はかなり王族と近しい方でして、近衛隊の副隊長もしている方なんです。その方が水の入っていたぺっとぼとるという容器に非常に興味を持っていました」


 近衛隊っていうと王族を守護する軍隊だ。フィクション等では姫を守る騎士隊というカッコイイ役柄もあれば、単なるお飾りの隊としても描かれる軍隊というのが俺の認識だ。


「やけに詳しいな? 副隊長の顔を覚えてるなんて。それも他国の」


「私は森の国の貴族として陽の国主催のパーティーに呼ばれたこともありますから……」


 そう言ってハリソンは苦笑いをする。そういえば、こいつは貴族だったんだよな。


「でも、ペットボトルを軍人がか。軍備にでもするのかな」


「そうかもしれません。もしかしたら、大口の注文があるかもしれないので一応はカズキ様に伝えておいたほうがいいかと思いまして」


「分かった。そういう情報はいくらあってもいい。一応これは報酬として渡しておく。好きに使え」


 銀貨を一枚ハリソンに渡す。


「いいのですか?」


「いいさ。言われた仕事だけするよりずっといい」


「ありがとうございます」


「カズキ様、私には?」


 アイリスが俺を見上げる。


「そだな。アイリスは今日は頑張ったな」


 俺はアイリスの頭を撫でてやった。


「えへへ」


 こんなことでも嬉しがるアイリスは可愛い。


「それじゃ、飯に行くか」

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