異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第59節 換金

 何かが傍でモゾモゾと動いている。そんな気配で俺は目が覚めた。
 ああ、アイリスが起きたのか。
 俺は寝ぼけ眼のまま上体を起こし、散らかった酒宴の残骸を見て辟易した。


「アイリス、片づけておいて。水とか使うなら、これ使って」


 俺は財布から銀貨を一枚取り出してアイリスに渡す。


「かしこまりました!」


 アイリスの返事を聞いてから、俺は二度寝を決心する。






 次に目が覚めた時はサイドテーブルに並んだグラス類とサイドチェアに座るアイリス。日はそこそこ高くなっており、俺自身空腹を感じていた。


「アイリス。腹減ってないか?」


「お腹ですか? 少し空いてます」


「なら、なんか食べるか。アイリス、これで二人を連れて飯でも食ってこい」


 銀貨を一1枚渡す。


「カズキ様は?」


「俺は向こうで食ってくる。こっちの飯は美味いことは美味いんだが、物足りない」


「わかりました。あと、これお釣りです」


 大銅貨を9枚手渡される。ああ、水の使用代って大銅貨1枚なのか。
 俺はそれを受け取ろうとして、やっぱりやめた。


「それも好きに使え。それより、今日から本格的に商売を始める。手始めにいくつか商品を用意して、俺の知り合いに鑑定してもらって、それをオルコット商会のセシルに売る。目標としてこの国で家を買うぞ」


「家ですか?」


「ああ。どれぐらいか分からないが、金貨20枚を具体目標とする」


「はい!」


「実際に動いてもらうのはロージーとハリソンだからな。二人にはバテないように十分飯を食べるよう言っておいてくれ」


「私は何をすれば?」


「アイリスは俺と一緒に商品を鑑定屋に持っていく。その荷物持ちだ」


「分かりました!」


「じゃあ、俺は朝食がてら商品を買ってくるからお前らは準備しておけ。この部屋には鍵をかけておくから、戻ってきたらお前は二人の部屋で待機だ」


「はい! 行ってきますね!」


 俺はアイリスを見送ってから部屋に鍵をかけ、現代に戻る。
 今日の朝食はうどんチェーン店でごぼ天うどんを食べる。ごぼう独特の歯ごたえが俺は好きだ。
 うどんを食べ終えた後、異世界で販売する商品を考える。安くて軽くて利益率が高い物がいい。なにせ運搬できる人が俺しかいない。そうすると、輸送が楽なものがいい。そして、大量に入荷できるものがいいな。金貨1枚は10000エルグで90000円に相当する。つまり、900円の品物で100エルグ以上の売り上げがないと利益が出ない。
 ふと、アイリスとの朝のやり取りや昨日のシャワーを思い出す。こちらの世界とあちらの世界では当たり前だが物価が違う。その中でも日本では非常に安価で手に入り、好きな時に好きなだけ手に入る資源がある。
 水だ。
 蛇口をひねればいくらでも出てくるし、ホースをつなげばいくらでも運べる。井戸水で大銅貨1枚だ。どれだけ利用したのかは分からないが、そう多い物ではないだろう。
 ……水を売るには容器がいるな。
 こっちの世界ではペットボトルなんてただのゴミだが、あちらに持っていけば割れず壊れず軽くて持ちやすい容器だ。向こうではもっぱら、水を入れる器といえば動物の胃袋から作った皮袋だ。値段までは知らないが、それなりの値がするのだろう。少なくとも、その皮袋よりは良い値がつくはずだ。
 安価にペットボトルを手に入れる方法は不潔な話だがゴミから直接取り出す方法か。いや、やめておこう。
 それはそれとして、水を売るための容器を普及させるのは悪くない考えな気がする。
 ディスカウントショップで売られている天然水系のペットボトルは2リットルで100円を切ることはざらだし、500ミリリットルのものでも非常に安価だ。そして、向こうの世界では水そのものが大銅貨1枚に相当するとすると100円の天然水ペットボトルが90円相当のエルグ硬貨に化け、ペットボトルそのものに値をつければ更に利益が出る。
 悪くない。
 早速、近所のディスカウントショップで2リットルペットボトルの6本入りのダンボールひと箱を買って異世界に送る。
 飲み物つながりで思い出したが、ハリソン曰く、こっちの酒は向こうの酒は非常に酸っぱくて美味しくないらしい。そこに現代の酒を持っていくとどうなるかというのは非常に興味深い。さらに数本だけ追加購入する。
 さてと、本格的商売の始まりだ。

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