異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第52節 酒

「アイリス。これからお前に仕事をやろう。もし、うまくできればもっと色んな菓子を食べさせてやる」


「はい! 頑張ります!」


「よし、いい返事だ。まずこれをやろう」


 俺は財布からなけなしの大銀貨を一枚取り出し、アイリスに手渡す。


「お前はハリソンとロージーを誘って飯を食べてこい。この金で許す限り好きなだけ食べてきていい。それから、ハリソンから使える魔法のリストとペンを返してもらえ。ロージーには明日には仕事を用意しておくから商売上、必要な道具は何かを聞いておけ。しばらくはお前に二人の管理をしてもらう。いいな?」


「私がお父様とお母様の管理ですか?」


「ああ。二人に直接言っても構わん。『カズキ様の命令でお父様とお母様の管理をしなければいけなくなりました』ってな。その方が話が通じやすいだろ」


「……」


 だんまりになるアイリス。まぁそれはそれだ。


「あの二人がお前を置いて逃亡する事もないだろうしな」


 極端な話、俺はアイリスが欲しかっただけであの二人はぶっちゃけオマケだ。


「分かったなら行ってこい。聞いた話で聞く奴隷よりは待遇は良くしているつもりだ。文句があるなら今日の晩飯は三人で銀貨一枚にしてもいいんだぞ?」


「い、行ってきます!」


 アイリスはギョッとした表情を浮かべてすぐに部屋を出ていった。


「さてと」


 俺はもう一度現代に戻り、財布を持つ。なんだかんだと現代の資金も不足している。そして手元にある金貨は一枚もないので換金もできない。そして、肝心の金貨は換金効率が俺の想定よりも悪い。


 一日の労働対価が銀貨五枚(異世界)=一万円(一万円)とするならば、銀貨一枚あたりは二千円ぐらいだと俺は思っていた。なら、金貨は銀貨の百枚分だから、二十万円相当のはず。しかし、実際は金貨一枚で九万円だった。よって、金貨の換金効率は悪いと言える。ならば、新しい換金アイテムを考えなければならない。そこで!


 俺はビールを買いに行った。


 俺は近くのスーパーに寄り、あの伝説のミニ缶を手に取る。メタリックなデザインのアレだ。他にも神話の霊獣が描かれたビールや、七福神の一柱が描かれたビール等、数種類のビールを買い込む。ついでにつまみとして焼き鳥を買う。
 これで落ちないおっさんはいないだろう。あの世界でこの味を知ってしまったら、もう普通の酒じゃ満足できなくなるかもしれないな。

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