異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第47節 絶対服従の契約

「バーナード、そろそろいいかしら?」


「はい」


 バーナードは何かを手にして戻ってきた。手にしていたのは赤い液体が入った陶器製の小皿だ。


「カズキ、アイリスの体にこの顔料で契の呪印を描いてちょうだい」


 そういえば、液体の色がさっきの宝石と同じ色だな。


「なんて書けばいいんだ?」


「どこに何を描いてもいいわ。指先に顔料を付けて、従者に命令をしながら呪印を描くのが作法よ」


「そうか。分かった」


 俺はバーナードから顔料と液体、水とは違い妙にテカテカしている。


「アイリス、前髪を上げろ」


「はい」


 アイリスに前髪を持ち上げさせ、俺はその小さな額に顔料をつけた指先で『祝』の字を描く。


「よし、もういいぞ」


「はい」


「カズキ、その顔料は翌日には見えなくなるわ。洗っても呪印の効果は残るから安心して」


「そうなのか」


 あぶらとり紙でも落ちない呪い! みたいな。


「さて、あなたたちの用事は済んだでしょう? それともまだ何か用がおありかしら?」


 そうだ。ここは魔宝石屋で魔宝石が買えるんだった。


「魔宝石を売って欲しい」


「あら、何が欲しいのかしら?」


 何がというより、何があるのか分からないんだけど。


「ここは店なんだよな? 商品の展示とかしないのか?」


「はい。これが目録よ」


 手渡されても、俺はこっちの文字が読めないんだよな。


「文字が読めるようになる魔宝石とかないのか?」


「あら、読めないのね。でも、文字を読めるようになる魔宝石は無いの」


「マジか……」


「一応、魔宝石について説明するわね。魔宝石は周囲の微弱な魔力を使う常時型と使用者や魔石の魔力を使う能動型、特定の条件の時に発動する条件型とそれ以外の特殊型があるわ」


 なんかゲームのスキルみたいな分類方法だな。


「何かオススメの魔宝石はあるか?」


「どんな魔宝石がいいかしら? 身につけると擬似的に腕力が強くなる魔宝石や、物を引き寄せたり吹き飛ばしたりできる魔宝石、風を起こす魔宝石、回転し続ける魔宝石や振動し続ける魔宝石なんて物もあるわよ」


「結構いろんな種類があるんだな。身につけると体が重くなる魔宝石とかもあるのか?」


「ええ、あるわよ。罪人や捕虜の足枷として使うのが一般的ね。身につけると体重が二倍から三倍になるわ」


「それを一つ欲しい。体重が三倍になるやつを」


「大銀貨五枚ね。ベルトはおまけにしておくわ」


「ありがとう」


 ただほど怖い物はないというけれど、ここは甘えておくことにしよう。


「いいわ。それで、誰が身につけるのかしら?」


「俺だ」


「え?」


「いいから。それをくれ」


「本当にいいのね?」


「ああ」


 アメリアの表情が見たことない顔になっている。大人びた女性の目が丸くなった表情は悪くない。


「バーナード、持ってきて」


「はい」


 バーナードは忠犬のように指示に従う。美女に使役されるイケメン。羨ましくはない。
 バーナードは黒革のベルトを持ってきた。ベルトの金具には魔宝石が埋め込まれている。


「カズキならベルトの調整も不要ね」


 俺はバーナードからベルトを受け取り、早速つけてみる。すると軽すぎた体がちょうど良くなる。少しむくんでいたような顔もスーっと正常な状態に戻っていくような感覚。


「大丈夫かしら? 急に体調が悪くなったりしていないわね?」


「ああ、大丈夫」


「随分と顔が白いようだけど、平気かしら?」


「あ、これが普通なんで」

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