異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第45節 人間観察

 薄く笑うアメリア。ネット上で30代前半の女性が一番綺麗って言われるのも理解できる程にこの女性は綺麗な気がする。
 文字通り、美魔女だろう。


「カズキ、あなたはどうして奴隷を手に入れようとしたのかしら?」


 お、人間観察の時間か?
 まぁ隠すほどのことでもないか。


「こいつが持ち出した取引なんだ。こいつら家族全員を俺が買い取って離れ離れにならないようにする代わりに、こいつが絶対服従の契りを結ぶって約束だ」


「あら、そんな口約束だけで買い取ったの? 大体金貨20枚ぐらいかしら。安くない金額ね」


「俺は外の国から流れ着いた人間で、俺の国の道具がここではいい値がついて一山当てたってわけ」


「そうなの。それは幸運だったわね」


「ああ」


 俺が頷いて見せるとアメリアはくすくすと笑って俺からアイリスへと視線を向けた。


「今度はアイリス。あなたよ」


「なんでしょうか?」


「あなた、ハーフよね」


「はい。お父様とお母様の子供です」


「あなたはどうしてカズキの奴隷になろうと思ったの? 従者となる意味は分かってるわよね」


「はい。私の体も命もカズキ様に捧げる覚悟です」


 ここまではっきりと断言されると面食らうな。見た目は小学生で、振る舞いも従順で可愛い女の子のように見えて、命を捧げる覚悟。その言葉を口にできるだろうか。


「……アイリス。あなたは良い従者になれると思うわ」


「そうですか?」


「ええ。あなたは賢いわ。きっと、カズキは良い主人になる。あなたはきっと最良の選択をしたと思っていいわ」


 俺の目の前でなんてことを言うんだ。この女。


「ありがとうございます!」


 アイリスは後ろでを組み、首をかしげて微笑んだ。こういう仕草は女の子っぽい。


「そのアイリスのお父様とお母様、名前は?」


「私がアイリスの父のハリソン。こっちが私の妻のロージーだ」


「初めまして、アメリアさん。ロージーです」


 話題がこの夫婦に移ったと同時に少しだけ身を引き、セシルの隣に立つ。


「セシル、奴隷でも結婚できるのか?」


 俺は小声で隣りのセシルに尋ねる。


「奴隷の結婚は主人の許可がなければできません」


 つまり、俺が二人の結婚を認めなければ夫婦でなくなるのか。


「ハリソン。あなたはどうして奴隷になったのかしら?」


 これまた聞きづらい事をずばりと聞くな。まぁ俺も気になるな。


「……。私は元々、森の国の貴族だった。広い領地もあったが、部下の裏切りにあい、私は国から罰として貴族としての権限を剥奪され、資金難となり、陽の国の貴族に金を借りた結果、返済ができずに奴隷となった」


 部下の裏切りか。


「あたなはもう一度貴族に戻りたいと思う?」


「いえ。私はもう貴族には戻りたくない。家族と一緒に暮らせる事が私の一番の望みだ」


 そういえば、家族が離れ離れになると言われた時に一番うろたえていたのはコイツだったな。


「話していただいてありがとう。貴族としての生活から奴隷としての生活。多くの困難にあうかもしれないわ。それでも、手放したくない一番大事な物がまだあなたにはあるわ。頑張りなさい」


「ありがとうございます」


 ハリソンは右手を左肩へ、左手を右肩へ伸ばし、深々と礼をする。


「次はロージー、あなたね」


「なんでしょうか?」

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