異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第42節 奴隷の引き取り③

 職人ギルドは商業地区を挟んで居住区の反対側に位置していた。
 特に煙突がある建物が何軒かあり、もくもくと煙が昇っている。
 そういった建物を素通りしてオルコット商会程ではないにしろ、堅牢な造りの大きな建物が視界に入った。


「あれが職人ギルドです」


 やっぱりか。
 文字は読めないが、両手が描かれた看板が下げられていた。手に職って言葉はこっちの世界でも通用するのかもしれない。
 振り向いてみると、ハリソンやロージーは周囲をキョロキョロとしている。周囲の視線が気になるのか、こういった場所が珍しいのか。アイリスは常に俺の背後に立ち、ニコニコとしている。


 ギルドの中に入ると人気は無く、受付では禿頭のおっさんが居眠りをしているところだった。少し赤ら顔なのが気になる。


「こんにちわ」


「……あ? ん……ああ、なんだ?」


 少し近寄っただけで酒臭い。このおっさん、昼真っから受付で酒飲んでんのかよ。
 これだけ人が少なかったら居眠りする気持ちも分かる。
 壁にはオルコット商会でも見たボードに似たボートが壁にかけられ、羊皮紙のスクロールが何枚か張り出されていた。


「セシル・オルコットです。紹介状を書いて欲しいのですが」


「ああ、オルコットの三男坊か……兄貴達は元気にしてるか?」


 おっさんはゆっくりと体を起こして、椅子にもたれるように座りなおした。


「はい。二人とも、仕事に精が出ているようです」


「上の兄貴に就任おめでとう。とでも伝えておいてくれ」


「はい。ところで、紹介状を――」


 セシルの言葉を待たず、おっさんは手でセシルを制した。


「仕事の依頼なら、俺の方で手配するぞ。金勘定する指を無くしたくなけりゃ、工房に近づくなってこった」


 その言葉にはどこか棘があるように俺は聞こえた。


「分かっています。今日はオルコット商会の三男坊ではなく、交易商のセシルとしてのお願いです」


「それならいい。それで、誰宛の紹介状だ?」


「奴隷の首輪に銘記できる革細工師と魔石を装飾品に加工できる職人と魔宝石を扱う職人を」


「変わってるな。後ろの坊主の奴隷のための革細工師ってのはまだ分かるが、魔石を装飾品にか。それは魔装という意味じゃないんだろ?」


「はい。お願いできますか?」


「仲介料は高いぞ?」


「構いません」


 セシルは大銀貨を3枚取り出し、卓上に置く。
 大銀貨といえば、この世界における平均収入6日分の給料だ。それを簡単にポンと出せるセシルはやっぱり凄いのかもしれない。


「……外で昼飯でも食って待ってろ。その間に書いちまう」

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